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『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』原作を見事に映像化した、名匠アン・リーの手法とは

(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』原作を見事に映像化した、名匠アン・リーの手法とは

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立体視への対応と海の表現



 先に述べたように、アン・リーは新技術に対して非常に積極的な人物である。このプロジェクトが彼の元で動き出した時、ちょうど第三次3D映画ブームが始まりつつあった。リーは、映画の70%を占める大海原の奥行き感を表現するのに3D技術が最適だと考え、VFXスーパーバイザーのビル・ウェステンホファーらと共に実際の海洋で撮影テストに臨んだ。


 技法としてリーは2D/3D変換ではなく、『アバター』(09)にも使用されたPACE Fusion 3-Dシステムを選んだ。これは2台のデジタルシネマカメラを、ハーフミラーを用いて組み合わせる仕組みで、システム全体が非常に大きくなる。そのため、これを海上で使用することは無理だと判断され、スタジオのタンク(プール)に置かれたボートのセットと、CGの海の組み合わせが選択された。



『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.


 そこで、台中市の現在は使用されていない古い飛行場に、大規模な専用スタジオを建設することになった。まず、格納庫一杯に巨大な油圧ジンバルが用意され、ツィムツーム号のセットと、嵐の場面用のボートの室内撮影が行われた。


 同時に、屋外に75×30×3mのタンクも建設された。このタンクには12台のポンプを用いた造波装置が設置されたが、反対側からのリバウンドによって不自然な白波が立ってしまう。そこで波消しブロックを設置することで、実際の海上のようなリアリティのある波が作れるようになった。


【参考文献】

(1) Max and the Cats‐Wikipedia

(2) Larry Rohternov 著: “Tiger in a Lifeboat, Panther in a Lifeboat: A Furor Over a Novel” The New York Times (NOV. 6, 2002)



文: 大口孝之 (おおぐち たかゆき)

1982年に日本初のCGプロダクションJCGLのディレクター。EXPO'90富士通パビリオンのIMAXドーム3D映像『ユニバース2~太陽の響~』のヘッドデザイナーなどを経てフリーの映像クリエーター。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞。最近作はNHKスペシャル『スペース・スペクタクル』(19)のストーリーボード。VFX、CG、3D映画、アートアニメ、展示映像などを専門とする映像ジャーナリストでもあり、映画雑誌、劇場パンフ、WEBなどに多数寄稿。デジタルハリウッド大学客員教授の他、東京藝大大学院アニメーション専攻、早稲田大理工学部、日本電子専門学校などで非常勤講師。



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