ドリュー・バリモア、栄光と挫折、そして復活
主人公のジョジーは「憧れの新聞記者になれる!」と喜び勇んで高校に潜入する。しかしジョジーには、高校時代に「化け物ジョジー」と酷いあだ名を付けられ、周囲からイジメられていた過去があった。今ではずいぶん痩せたし、オシャレだってする。「もう昔の私じゃない」はずなのに、偽りの学園生活によって否応なしに過去のトラウマに引き戻される。本作はコメディの皮を被っているが、25歳のジョジーがティーンだった自分自身の悪夢に呑み込まれそうになるサイコホラーでもある。
ドリューのキャリアにも暗黒期があったことは先にも述べた。ドリューをスターダムに押し上げたのはスティーヴン・スピルバーグ監督のメガヒット作『E.T.』(82)だが、当時8歳だった彼女はたちまちセレブ子役の罠にハマり、ティーンエイジャーになる頃にはアルコールとドラッグの中毒で、14歳でリハビリ施設に入所している。体中にタトゥーを入れたり19歳で電撃結婚してすぐ離婚するなど、数々の不品行と混乱したプライベートライフでゴシップ誌を賑わしたりもした。
『E.T.』予告
しかし、いくつかの“汚れ役”に挑んだ後、『スクリーム』(96)の冒頭で殺される女子高生を演じた辺りからキャリアの修復に成功し、アダム・サンドラーと共演した前述の『ウェディング・シンガー』で「清純派ロマコメ女優」への転身を遂げた。全米のみならず世界中が彼女のゴシップを知っていたのだから、相当にドラスティックな路線変更だったと言える。
そんな彼女が、自ら作りたい映画を作るために立ち上げたのが「フラワー・フィルムズ」だった。ドリューはInstagramに本作の『25年目のキス』20周年のコメントを投稿しており、「イカレた笑いに“痛み”の要素が混ざっていなければ、この作品は上手くいかなかった」と語っている。その“痛み”とは、彼女自身が経験した悪夢でもあった。