1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. アラビアのロレンス
  4. 『アラビアのロレンス』スピルバーグに監督になることを決意させた圧倒的な映像世界
『アラビアのロレンス』スピルバーグに監督になることを決意させた圧倒的な映像世界

『アラビアのロレンス』スピルバーグに監督になることを決意させた圧倒的な映像世界

PAGES


スコセッシやスピルバーグからの贈り物



 かくも圧倒的な意匠の詰まった本作だが、‘62年の公開版は諸般の事情でカットが重なり、リーン監督にとって不本意な形だったそうだ。その後、削除フィルムが見つかったのを機に、本来望んでいた状態に構成し直してデジタル・リマスタリングされたものが’88年に「完全版」となってお披露目されることになる。


 そして、多額の資金を必要とするこのプロジェクトで大きな役割を担ったのが、マーティン・スコセッシとスティーブン・スピルバーグ。いずれも本作に多大な影響を受けて育った者たちだ。二人が完全版製作の旗振り役となり、新たな世代がフレッシュな気持ちでこの伝説的な作品に触れるきっかけをもたらしたのである。’88年はロレンス生誕100周年という節目でもあり、さながら完全版の誕生は、彼らからロレンスへの心からの誕生プレゼントならぬ、人生の恩返しという意味すら込められていたように思えてならない。




 最後に、ロレンスとスピルバーグの関係をもうひとつだけ。ロレンス物として有名な作品に、『A Dangerous Man: Lawrence After Arabia』(90)というTV映画があるのだが、これでタイトルロールを演じたのが無名時代のレイフ・ファインズだった。


 『アラビアのロレンス』の“その後”を描く本作をスピルバーグが見逃すはずはなく、これがきっかけとなって彼はファインズを次回作の重要な役に抜擢することを決意。そうして誕生した『シンドラーのリスト』(93)がスピルバーグに新たな次元の扉を開かせ、冷酷なナチス将校役を演じたファインズにもブレイクスルーをもたらしたことは誰もが知るところである。


 真の傑作とは、歴史に置き去りにされることなく、絶えず現在に影響を与え続けるものをいう。『アラビアのロレンス』とスピルバーグの関係を見てもそれは一目瞭然だ。彼が今なおこの作品に圧倒され続けるように、半世紀を経てもなお新作のように輝く本作から、我々が得るものもきっと大きいはず。


 完全版227分の砂漠の道のりを、一度と言わず何度でも、ぜひ体感してみてほしい。



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



今すぐ観る


作品情報を見る





『アラビアのロレンス』

ブルーレイ発売中 ¥2,381+税

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

(c)1962, renewed 1990, (c)1988 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. アラビアのロレンス
  4. 『アラビアのロレンス』スピルバーグに監督になることを決意させた圧倒的な映像世界