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『アイネクライネナハトムジーク』が奏でる、小説・音楽・映画の幸福な“出会い”

(c)2019「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会

『アイネクライネナハトムジーク』が奏でる、小説・音楽・映画の幸福な“出会い”

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数えきれない“出会い”のその先へ



 作家の伊坂幸太郎と音楽家の斉藤和義の“出会い”から、小説と楽曲が生まれた。その小説を映画化するにあたり、当時インディーズの作り手だった今泉力哉に伊坂が注目し起用が実現したこともまた、“出会い”と呼ぶことができるだろう。今泉監督は、脚本の鈴木謙一、撮影の月永雄太らの感性と技量、俳優たちの確かな演技力にも助けられ、自ら「僕にとって今までにない規模感」と呼ぶ商業映画を作り上げた。今泉監督にとって今年は、4月公開の『愛がなんだ』(角田光代原作、岸井ゆきの主演)がロングランヒットを記録したこともあり、飛躍の一年となるのは間違いない。



『アイネクライネナハトムジーク』(c)2019「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会


 映画『アイネクライネナハトムジーク』がヒットしたら、スピンオフか続編が製作されるのでは、という期待もかかる。先に紹介した通り、原作の短編集のうち2編の内容はほとんど映画で言及されていない。ベースになった4編に関しても、たとえば最後の「ナハトムジーク」ではウィンストン小野のタイトル再挑戦からさらに9年後が描かれるなど、やはり映画に反映されていない要素が残っている。


 こうした材料だけでも、佐藤と紗季以外の人物を中心に描くスピンオフの映像作品の企画が成立しそうだ。さらに妄想を膨らませて、斉藤の『小さな夜』の歌詞や映画オリジナルのエピソードに刺激を受けた伊坂が、世界観と登場人物を共有する新たな短編を書き下ろすという展開はどうだろう。そうなればますます、続編映画の実現可能性も高まるはずだし、それが現実になるというささやかな奇跡を祈らずにはいられない。



【参考文献】

アイネクライネナハトムジーク』伊坂幸太郎著、幻冬舎刊



文: 高森郁哉(たかもり いくや)

フリーランスのライター、英日翻訳者。主にウェブ媒体で映画評やコラムの寄稿、ニュース記事の翻訳を行う。訳書に『「スター・ウォーズ」を科学する―徹底検証! フォースの正体から銀河間旅行まで』(マーク・ブレイク&ジョン・チェイス著、化学同人刊)ほか。



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作品情報を見る



『アイネクライネナハトムジーク』

9月20日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

(c)2019「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会

公式サイト:https://gaga.ne.jp/EinekleineNachtmusik/


※2019年9月記事掲載時の情報です。

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