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映画を作っていないと不安になる――アリ・アスター監督『ミッドサマー』【Director's Interview Vol.55】

映画を作っていないと不安になる――アリ・アスター監督『ミッドサマー』【Director's Interview Vol.55】

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たった1つだけ克服できない「家族」という主題



Q:アリ監督は初期作からずっと、家族の奇妙な関係性を描いているように感じます。この“家族”というテーマは、今挙げていただいたような映画から得たものなのか、それともご自身の中から湧き上がってきたものなのか、どちらでしょう?


アリ:作品から得たというより、自分自身の体験や、常に自分の脳裏にあるものからきていると思う。僕は脚本を書き、映画を作ることで、自分の中にある強迫観念に蓋をしてきた。ただ1つだけ克服できないものがあって……それがどうも、“家族”なんだよね。


Q:『ヘレディタリー/継承』と『ミッドサマー』を観ると、「信仰」というテーマも大切にされているように思います。こちらはいかがでしょう?


アリ:そうだね、単に信仰というだけじゃなく「部族主義」や「儀式」、それから「伝統」に興味があるんだと思う。人と人が一緒に暮らすとき、それぞれの「伝統」が他の人の「伝統」とぶつかるよね。他者と共に暮らす、或いは生きるのがどのくらい難しいのか、という本質的な部分に惹かれるんだ。




Q:そうか、「信仰」は「伝統」、「家族」ともつながってるんですね……。ちなみに、脚本を執筆される際には、例えばシーンがパッと浮かぶのか、もしくは「こういうキャラクターを書きたい」とロジカルに構築するのか、どういったプロセスを踏むのでしょう?


アリ:毎回違うんだよね。ただ、自分が1番筆致がいいと感じるのは、最も自分をザワつかせるものを、テーマにすること。つまり自分が危機に瀕しているときに、それについて書くのが1番いい(注:『へレディタリー/継承』は監督自身の家族との問題、『ミッドサマー』は失恋経験がモチーフになっているという)。


同時に僕はビジュアル畑の人間だから、最初に何かイメージが浮かぶタイプ。そのビジョンが、執筆作業もそうだし、映画作り自体の最後まで背中を押してくれる原動力になっていくんだ。『ヘレディタリー/継承』も『ミッドサマー』も、そういう明確なビジョンが、1、2個くらいあったよ。


Q:へぇ! ちなみに『ミッドサマー』の場合、最初に浮かんだシーンは……?


アリ:言った方がいい? ネタバレだけど。最後の方のあるシーンなんだ。




Q:おっと……。ファンの楽しみのために、「最後の方」にとどめておきましょう。


アリ:(笑)。あとは……キャラクターも凄く大切にしているよ。キャラクターのことは僕自身が誰よりもちゃんと、理解しているのが重要。脚本を書いているときは、それぞれのキャラクターになりきれるぐらいの理解度がなければいけない。


物語というのは、キャラクターの置かれている状況や背景から出てこなければいけないと思っているんだ。シーンに合わせてそのキャラクターを作るのではなくてね。



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