妻や出演者の意見を取り入れ「いまの物語」に
Q:テーマ性やストーリーについても伺いたいのですが、女性ふたりが友人でありながら、ある種の夫婦関係を結び、子どもを育てていくという友情の形が、非常に現代的でした。
津田:書いた当初はもう少しシンプルな友情の話だったんですが、撮影まで4・5年かかったなかで、自分が子どもを育てたり、育児に対する周りの状況を見たり、ここ2・3年のフェミニズムの風潮もキャッチしながら、アップデートさせていきました。
公開したタイミングでの「時代を象徴する映画」にしたいという想いがあったんです。10年20年経ってからこの映画を観たときに「2020年ってこういう空気感だったんだ」とわかるものであるべきだと思い、時代の空気に寄せていきました。
Q:まさに「いま観たいもの」であり、ふたりの関係性が沁みました。
津田:ありがとうございます。
Q:劇中の「“女はこうあるべき”はよくないよね」というセリフもすごく好きだったのですが、同時に「産休を取った女性の職場復帰の難しさ」も描かれていて、両者の対比が刺さります。この部分は、津田監督がリサーチされていく中で生まれたものなのでしょうか。
津田:職場のシーンは、妻にアドバイスをもらったんです。それを少し強調して、作っていきました。リアリティの部分は、妻の存在が大きかったですね。
Q:なるほど! 作品全体で目線がフラットだと感じたのですが、そういう理由だったんですね。今お話しいただいた「目線を入れる」の部分だと、三吉彩花さんと阿部純子さんの意見も取り入れて作っていったと伺いました。
津田:撮影の1ヶ月くらい前に三吉さんと阿部さんとご飯を食べながら、この映画で僕がやりたいことなどを話したんですが、「部屋ももうあるよ」と言ったら、三吉さんの方から「阿部さんとふたりで過ごす時間を増やしたい」と提案してくれたんです。
ふたりの関係にリアリティを出したかったから、ありがたかったですね。撮影のときにも「セリフを一字一句脚本の通りに言わなくていいよ」とは伝えたし、彼女たちから出た「彩乃や小春はこう言わないんじゃないか」という意見も素直に組み込みました(笑)。
Q:撮影を2019年の3月、6月、10月と3回に分けてロングスパンで行ったことも、空気感の醸成につながったのではないかと思うのですが、いかがでしょう?
津田:それはありますね。あと、僕としても少しずつ「映画の撮影」に体を慣らすことができて、すごく良かったです。
春のパートを撮って、次の撮影までの期間にじっくり夏のパートのことを考えられたし、ほぼ順撮りできた点も大きかったですね。秋のパートが始まる前に、阿部さんが「妊娠した女性の気持ちを、もう1回ちゃんと話し合いたい」と言ってくれて、僕も追加で取材をして、作品をより深く作っていけたんです。