スタジオライカ最新作『ミッシング・リンク』クリス・バトラー監督×八代健志監督リモート対談 ストップモーションの可能性を広げたい【Director's Interview Vol.91】
実物の美術と光がおりなす「不完全さ」
八代:クリスさんは新しい映画を作るとき、技術的に「今回はこれをクリアしよう」と目標を決めて作り始めたりするのですか。
クリス:ないですね。スタジオとして決めているのは、「なにか、今までやっていないことをしよう」くらいですね。
そのため物語のテーマも作品によってどんどん変えています。例えば、『コララインとボタンの魔女』(09)はダークなおとぎ話のような世界、『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(12)は80年代のホラー物をフューチャーした世界です。
『パラノーマン』が終わった時に、僕は全く違うことをしてみたいと思いました。いわゆる、ちょっと不吉だったり不気味であったり、怖い世界観というのは十分作ったから、今度は影から光に当たりに行ってみようと。
あえて明るく、絵の具のパレットのようにカラフルで、広大で、万華鏡のように光があるーー、そういう作品を作りたいと思ったのが、この『ミッシング・リンク』です。
八代:そう言われてみると、昼のシーンは風景に広がりがあるロケーションが多かったし、明るい光のせいか、何となく全体に透明感を感じました。
クリス:そういう風に感じていただいてすごく嬉しいですね。まさにそういったところを今回追求していました。
美術セットは大きなものがたくさんあり、グリーンバック合成も使っています。最終的なルックがどうなるかについて、撮影監督、美術監督、プロダクションデザイナー、あとはVFXにおいて、かなりしっかりしたチームが必要でした。それらのチームの仕事が全て合わさった時に、「実物に本物の光が当たっている」ことを実感できる画にならなくてはなりません。なぜかというと、僕にとってそれがストップモーションの特別なところだからです。
本当の物に本当の光が当たり、命が宿っているように感じる、それがストップモーションの魅力だと思います。他の媒体ではこれがなかなかできない。もちろんCGは進歩し続けているし、「本物」を追い続けているけれど、本当の物に本当の光が当たる時の、どこかカオスな、不完全さというのは、まだ実現できていません。
衣装もそうです。布を織る糸を一本一本感じ、洋服の模様や素材によって、光がそれぞれ特別な当たり方をする、顔に当たる反射光もそれに影響される。そういう部分にこだわることによって、見ている人が思わず触りたくなるような質感の映像になると思います。
まるで子どもがおもちゃに手を伸ばして行くように、命がないものに命を吹き込んで行く、それこそがストップモーションの醍醐味ですし、人を惹きつけてくれるものだと思うんですよね。
八代:本当にそうですよね。