スタジオライカ最新作『ミッシング・リンク』クリス・バトラー監督×八代健志監督リモート対談 ストップモーションの可能性を広げたい【Director's Interview Vol.91】
現代的なメッセージと映画体験の入り口
Q:『ミッシング・リンク』には、主人公ライオネルも含めて、自分に夢中で周囲のことを考えない大人が多く登場します。これは映画を見る大人たちへ向けたメッセージが含まれているのかなと感じました。
クリス:その通りですね。気づいてくれて嬉しいです。
八代:キャラクター同士の人間関係も、ちょっと大人っぽいところがありますよね。子どもが出てこないこともあって、今作は大人に向けた作品なのかなと僕は感じました。僕自身もアニメーションは大人として楽しみたいと思っているので、そういったところも面白いなと。
クリス:ライカの作品は今回5作目ですが、初めて大人が主人公になります。僕は46歳の大人の男性ですが、その僕ですら、かつての作品の主人公である子たちのように、自分の人生の道のりを見出そうといまだに葛藤しているわけです。そういう風に考えると今回の大人のキャラクターは、これまでライカの作品に登場した全てのキャラクターの中で、一番子どもっぽいと思います。
今回の物語の道のりは、場所を探す旅ではなくて、彼らの内側にいる自分を見つける旅なんです。最初このキャラクターたちは、周りから自分がどう見えるかしか考えていないし、それを一番大事に思っている。だけどそれは間違っていて、「自分が誰なのかを決めるのは自分なんだ」っていうことに気づいて欲しい、そういう部分を伝えたいと思いました。
八代:英国の紳士といったら、人間が出来上がっている人を想像していたのですが、中身は子どもっぽかったり、俗っぽい夢を追っかけていたりしていて、そこが結構驚きでした。
今お話を伺うと、僕も50歳の大人ですけど、心の中は結構子どもなんですよね。「大人」っていっても、実は中身は子どものままなんだよ、大人にならなくても大丈夫だよって言われているような感じがあって。さっき大人向けの内容かなといったけど、逆にそういったところは子どもが見て学べるものだとも思いましたね。
クリス:そうかもしれませんね。脚本を書いているときは、特に対象の年齢層というのは意識して考えていませんでした。ライカとしては、基本的に全ての層にアピールしたいと思っていますし、大人も子どもも楽しめるような、本当の意味でのファミリーものを作りたいと思っています。もちろん大人向けのジョークであったり、難しい言葉も出てきますが、全部は理解できなくてもいいと思っています。
僕はアニメーションが子どものベイビーシッティング(親が自分の時間を取れるように、子どもの関心を引いておく)のために使われることが本当に嫌いなんです。そうじゃなくて、アニメーションというのは、色やテーマ、もっと意味深いもの、全てを含んだ映画体験への入り口であってほしいと思っています。そういう意味でも年齢に関係なく見ていただけるような作品作りを目指しています。