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『ガタカ』から考える未来の命 「Cinema未来館」SFは未来のシナリオか?【CINEMORE ACADEMY Vol.13】

(c)Photofest / Getty Images

『ガタカ』から考える未来の命 「Cinema未来館」SFは未来のシナリオか?【CINEMORE ACADEMY Vol.13】

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人生を変えたSF作品



Q:次のトークテーマ「科学技術とフィクションの関係性」について話していきましょう。ここで会場の皆さんにも「あなたの人生を変えたSF作品は」というテーマでアンケートを行いたいと思います。映画だけではなく小説や漫画も対象です。ちなみにお二人はどんな作品を挙げますか。


八代:分からないですね、小さい頃からアニメでいうとガンダムがありましたし、最初に読んだのは小学校の時に星新一作品を読んだと思うのですが、人生がそれで変わったかと言われると、変わっていない気がする。


最初に毒があって面白いと思ったのは、筒井康隆さんの「農協月へ行く」かな。そして本格的に人生が歪んだのは、おそらく「星界の紋章」という森岡浩之さんの作品を読んでからで、ここ(日本科学未来館)の近くにある建物(ビッグサイト)で本を売っていた気がします。


佐藤:私はリアルタイムで「さよならジュピター」を読んでいたのですが、小説を読んで泣いて、そして映画を見て笑ったんですよ、面白いなって。映画と小説でこれだけ違うものになっていて。小説では結構ふわっと読んでいるところが、映画になるとドーンと来てしまうので、子供ながらに滑稽に思ってしまった。


あと、「さよならジュピター」の小説を読んだ時の感動を、『トップをねらえ!』(88)の木星を使った爆弾を見た時にも感じましたね。


八代:人生が変わったのは『トップをねらえ!』かもしれないですね。高校生のころ、友達がレンタルしてきたビデオをもってきてダビングしてくれというので(笑)、いっしょに見ました。


佐藤:『トップをねらえ!』というのは『エヴァンゲリオン』(95-96)の庵野秀明監督がつくったOVAなんですよ。『エースをねらえ!』と『トップ・ガン』(86)を足したスポ根モノです。


八代:基本はパロディモノなのですが、全編を通してオタクのツボを押すものしか入っていない。


佐藤:それがSFとして3〜4話くらいから凄いベクトルに行くんですね。ハードSF。これがSFモノの目覚めだったかも知れません。『AKIRA』(88)や『ブレードランナー』(82)はビジュアル面で影響を受けました。




八代:アンケートで出ている『ブラジルから来た少年』(78)、これも当時クローンがブームでしたね。確かこの作品って、日本では最初公開されていなかった。ただ、その年に日本では『ルパンVS複製人間』(78)が公開されていて、こちらもクローンでヒトラーを作ったりしていた。


結局は『ブラジルから来た少年』というのは、遺伝子だけではなくて育ちも揃えないとヒトラーにはならない、という大事なキーとして描かれています。あと、SFというよりはホラーとかサスペンスの香りが漂う中、設定として科学的なギミックを入れて練り込んでいるところがまた良いですよね。


Q:クローンの話が出ましたが、八代さんは生命科学がSFのなかでどのように描かれていたのかも研究されていると思うのですが、その研究をやるにあたって影響を受けた作品はありますか?


八代:影響を受けたのは瀬名秀明さんの「パラサイト・イヴ」か「BRAIN VALLEY」ですね。学部生の時にミトコンドリアを研究していたので親近感があったというか。瀬名さんの作品はライフサイエンスそのものが人間性を奪う側ではないんです。大体のSF作品だとライフサイエンスが奪う側になっていますよね。


佐藤:要するに科学が人間性を奪う側になってしまいがち。ガタカでも人間の未知なる可能性を削ぎ落としてしまう。あるいは遺伝子という情報だけで人間に優劣をつけるといったところから始まっています。


SFジャンルの出発点とも言われるフランケンシュタインでも、ライフサイエンスをやる人間の狂気性や、生命に触れようとする不遜さとして描かれている。


もちろんポピュラーカルチャーというのは、一般の方々の生命観というのを反映していることは分かっているのですが、じゃあその違和感や恐怖感の源泉って何なのでしょうかね。



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