90年代、ソ連からイスラエルに移住してきたスター声優の老夫婦。夢にまで見た新天地で、彼らが得た職は、海賊版ビデオの吹き替えにテレフォン・セックス嬢だった!? 移民という重くなりそうなテーマを取り上げながらも、コメディをベースに映画愛溢れる作品を作り上げたのは、自身も移民の経験があるエフゲニー・ルーマン監督。往年の映画への愛をちりばめながら、笑いあり涙ありのドラマに仕立てた監督に、メールで話を伺った。
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モデルとなったのはフェリーニ夫妻
Q:老夫婦、声優という設定がとても効果的で面白かったです。発想の源泉はどこにあったのでしょうか?
ルーマン:こういったキャラクターが出てくる映画は、これまであまりないと思ったんだ。移民がテーマの物語は、通常は若い人を主人公にすることが多いよね。でも、歳を重ねて人生経験も豊かな人が、新たな場所で生活するとき、彼らは一体どんなことを経験するんだろう。と考えたんだよ。
Q:先述の設定に加えて、海賊版ビデオの吹き替えとテレフォンセックスというアイデアも最高でした。これも何かヒントとなるものはあったのでしょうか?
ルーマン:これは全部、僕たちの経験が元になっているんだ。妻のラヤ役のオーディションに来た役者さんの半分が、同じような経験をしたと言っていたよ。新聞で求人を見て電話をしたら、テレフォンセックスの仕事だったという。当時は結構あったことなんだよ。
レンタルビデオ屋も、映画に出てきた違法の店があちこちにあったんだ。もはや、サブカルチャーとして存在していたくらいだったからね。子供の時のそうしたことがすごく記憶に残っていて、そこから着想を得たんだ。
Q:普遍的な夫婦仲は共感するものがありました。二人に子供がいないことにより、二人の関係性によりフォーカスがあたっていたように思いますが、子供がいない設定にしたのは何か理由があるのでしょうか?
ルーマン:脚本執筆中、この二人に子供がいるかどうか自分に問いただしたとき、答えはノーだった。彼らは、自分たちの全てをアートに捧げたという設定だからね。それは、彼らのモデルにした、フェデリコ・フェリーニ監督とその妻ジュリエッタ・マシーナと同じなんだ。キャラクターたちが自ら捧げているものがあり、それで全ての必要性が満たされている。だから、彼らは子供を産まなかったと思ったんだ。