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世界で活躍する映画監督・深田晃司、監督作15作品を本人が一挙解説!
舞台記録『んぐまーま』TV初 2006年 / 58分
(C)(有)レトル あなんじゅぱす
監督・撮影・編集:深田晃司
出演:岩下徹(ダンス)/ひらたよーこ(作曲・歌・ピアノ)/只野展也(音楽監督・キーボード)
『椅子』に主演で出てくれた俳優井上三奈子さんが、あるとき、今度舞台出るから見に来てと誘われ足を運んだのが平田オリザ主宰の劇団青年団でした。当時偏狭なこじらせシネフィルだった自分は演劇を映画より見下す傾向にあったが、そのとき初めて見た青年団の「現代口語演劇」は最高に洗練され面白く、自分に不足していたものがここにこそある気がした。
ロメールと青年団を足して2で割れば新しい映画ができるのでは、と妄想し留学するような気持ちで2005年に青年団演出部に入団。翌年、東映アニメーションで作った静止画アニメーション『ざくろ屋敷 バルザック「人間喜劇」より』に出演してくれた、青年団の俳優で歌手のひらたよーこさんからお声がかかり撮影を担当したのが、この『んぐまーま』です。谷川俊太郎さんの詩をひらたよーこさんが歌にして、その音楽にあわせて山海塾の岩下徹さんがコンテンポラリーダンスを披露した作品。アゴラ劇場支援会員限定という特殊な公演だったため、面白い舞台なのに実は見ている人は少ない。この機会にぜひ。
『東京人間喜劇』TV初・未ソフト化 2008年 / 140分 / 日本 / 青年団若手自主企画vol.40
(C)有限会社アゴラ企画/青年団・株式会社TOKYO GARAGE
監督・脚本・編集:深田晃司
出演:角舘玲奈、荻野友里、山本雅幸、根本江理子、古舘寛治、志賀廣太郎、岩下徹、齋藤徹
舞台記録『んぐまーま』でのご縁で山海塾の岩下徹さんにご本人役でご出演頂いた作品。
青年団には演出部が劇団に企画を出して、審査に通れば助成金がおりて俳優たちと作品が作れるという制度がある。劇団なので普通は演劇なのだけど、自分はこの制度を利用しつつ貯金をはたいて映画を作った。以後、2005年の入団以来一度も演劇を作ることなく今に至っている。劇団の懐の深さに感謝するしかない。
とても思い入れの強い作品で、編集が終わった瞬間に感じた強い手応えと興奮は今でも覚えている。2007年に、この映画への出演を呼びかけるために青年団の劇団員全員に送った檄文が、古いメールの引き出しから出てきたので以下に転載します。
「以下、余談になりますが、僕の敬愛する映画監督の一人に、山中貞雄という人がいます。山中監督は戦前に活躍し、若くして中国・開封で戦病死した人で、現在全尺の見れる作品が3本しかないにも関わらず、その際立った個性と完成度で戦後高い評価を得るに至りました。そして、山中監督の業績を語る上で見逃せないのが、前進座との共同作業です。
前進座に惚れ込んだ山中監督は自らの申し出によって、前進座とともに映画を作り始め、特にその代表作であり遺作である『人情紙風船』は、前進座総出演によって独自の演技様式を獲得し、結果非常に強固な映画世界へと結実しました。
今回、深田企画という形で青年団の皆さんと共に映画を作れることになり、憚りながらも、かつての山中監督と前進座のような幸福な共同作業ができればいいなと願っています。私自身、まだまだ経験の少ない若輩者で、これから手探りで自分自身の文法を確立しなくてはならないのですが、ぜひ皆さんの力を貸して頂ければ幸いです。」
この作品で志賀廣太郎さん、コントラバス奏者の齋藤徹さんに出会えたことは一生の思い出です。ありがとうございました。