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『Arc アーク』石川慶監督×芳根京子 石川監督は役者の感性を否定せず大切にしてくれるんです【Director’s Interview Vol.122】

『Arc アーク』石川慶監督×芳根京子 石川監督は役者の感性を否定せず大切にしてくれるんです【Director’s Interview Vol.122】

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編集でカットされた幻のシーン



Q:共演者の小林薫さんも非常に印象的でした。芳根さんと小林さんの海のシーンも素晴らしく、その分撮影は難しかったのではないかと思いますが、現場ではいかがでしたか? 


石川:いや、あれはですね、なかなか大変なシーンだったんです。「海の上で撮りたい」なんて、どこかの監督が言うもんだから(笑)。そもそもどこで撮るんだ?って、まずそこで二転三転しましたね。でもスタッフがすごく頑張ってくれて、波の静かな湾を選んできてくれたおかげで、海の上でも落ち着いて撮ることが出来ました。


撮影したのは2月だったので、ロケハンの時はもう絶望的な寒さで…。これ、寒すぎてお芝居なんて出来ないのでは?って、相当心配しました。場合によっては、船を陸に上げて倉庫での撮影なども覚悟していたのですが、実際の撮影の時は暖かくて、海も奇跡的に穏やかで、逆にちょっと波がなさ過ぎるくらいでした。


実際に重要なシーンだったのですが、僕は現場ではあまり何も言わなかったですね。このシーンに関しては、撮影前の段取りもそんなにやっていないです。

 

© 2021映画『Arc』製作委員会


Q:実際に海の上で演じられた、芳根さんはいかがでしたか。


芳根:実はあのシーン、すごく大事なところが本編からカットされているんです。


Q:え、本当ですか⁉︎ それはどういうことですか?


芳根:私はどの作品に出演した時も、「ああ、このシーンやりきったな」って自分で満足した日は、撮影後にコンビニに寄って、ご褒美にアイスを買うんです。この映画でもアイスを買った日があったのですが、まさにその日に撮っていたシーンがカットされたんです。


石川:いやぁ、それくらい良いシーンなんですよ(笑)。


芳根:それくらい思い入れが強くて、現場でもやりきったシーンだったのですが、完成した映画を見ると、何とそれが入ってないんです!普通だったら「なぜカットしたの⁉︎ 何で!」みたいな気持ちが芽生えると思うのですが、でも今回はそれが不思議とないんですよね。むしろすごく感動しました。カットされても感動したのは初めてかもしれません。


撮影を通して、私たちは素材を提供するみたいなものなので、編集作業については、「石川さん、調理の方よろしくお願いします」とお任せする感じなんです。だからカットされた時は、「あぁ、あの食材捨てたんだ…」みたいな感覚も実はあるんです。


石川:それもメインディッシュぐらいの食材でしたからね。


芳根:そうなんです!すごく高いお肉を捨てたのに、それでもすごく美味しいステーキが出来ているんです。本当に不思議でしたね。


Q:そう言われるとそのバージョンも見たくなりますね。


石川:そうですよね。でもDVD特典とかには、あえて入れない方がいいかもな(笑)。


芳根:でもそのシーンは、すごく頑張ったんです。4時間くらいの映画になってもいいので、全部繋がったやつも作ってください!私だけ見たいです(笑)。


Q:カットされたシーンもあるかと思いますが、それでも本作は見事なクオリティで完成していると思います。最後に、完成された映画を見た感想をそれぞれ聞かせてください。


石川:『愚行録』や『蜜蜂と遠雷』のときは、すでに企画があって、そこに監督として参加したのですが、『Arc アーク』に関しては企画の立ち上げから携わっていて、自分が好きなもの全部詰め込んで完成させました。そんなこともあり、まだ客観的に見れないんです。公開後、映画館に見に行って初めて、その答えが分かるような気がしています。


芳根:私もまだ、そんなに客観的には見れないのですが、石川慶監督作品に参加できた喜びをすごく感じています。石川さんが好きなことを詰め込んだという、その作品の真ん中に立たせてもらえたことが、すごくうれしくて。この作品のように、監督と一緒になって撮影を進めていくことは、なかなかできない経験だと思うので、この仕事自体が贅沢な時間でした。



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監督・脚本・編集:石川慶

1977年生まれ、愛知県出身。ポーランド国立映画大学で演出を学ぶ。2017年に公開した『愚行録』では、ベネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門に選出されたほか、新藤兼人賞銀賞、ヨコハマ映画祭、日本映画プロフェッショナル大賞では新人監督賞も受賞。恩田陸の傑作ベストセラーを実写映画化した音楽青春ドラマ『蜜蜂と遠雷』(19)では、毎日映画コンクール日本映画大賞、日本アカデミー賞優秀作品賞などを受賞。その他の主な映画監督作には短編『点』(17)がある。





芳根京子

1997年生まれ、東京都出身。2013年「ラスト♡シンデレラ」で女優デビューし、翌年『物置のピアノ』(監督:似内千晶)で、映画初出演で初主演。同年、NHK連続テレビ小説「花子とアン」、16年にも「べっぴんさん」のヒロインを演じ、知名度は全国区に。映画出演は『心が叫びたがってるんだ。』(17/監督:熊澤尚人)、『累―かさね―』(18/監督:佐藤祐市)、『散り椿』(18/監督:木村大作)の演技が評価され、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。近作では、『居眠り磐音』(19/監督:本木克英)、『今日も嫌がらせ弁当』(19/監督:塚本連平)、『記憶屋 あなたを忘れない』(20/監督:平川雄一朗)、『ファーストラヴ』(21/監督:堤幸彦)など。公開待機作に『峠 最後のサムライ』(22公開予定/監督:小泉堯史)がある。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成

ヘアメイク:尾曲いずみ 

スタイリスト:藤本大輔(tas)




『Arc アーク』

6月25日(金)全国ロードショー  

配給:ワーナー・ブラザース映画

© 2021映画『Arc』製作委員会

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