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『逆光』須藤蓮監督 割り切り過ぎている世界とその危機感【Director’s Interview Vol.127】

『逆光』須藤蓮監督 割り切り過ぎている世界とその危機感【Director’s Interview Vol.127】

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固定化されたものを疑え



Q:そろそろ最後の質問です。地方から東京へという新しい配給宣伝に、今まさにチャレンジされている最中ですが、現時点での手応えについて教えてください。


須藤:今の日本の配給システムは、ある意味最も効率的で最も受け身なんです。それはそれで一つの正解なのですが、受け身の姿勢であるということは、“やらされている”ことと同じなので、それだけを続けてしまうと、携わる人間のエネルギーはどんどん衰えていく。ものの見方が固定化してしまうことは、すごく危ないことでもあるんです。だから、固定化されたものを疑うことは、より広く世界を見ることができて、自分という存在を肯定できることにもつながる。僕自身、『ワンダーウォール』の配給宣伝の経験から、それを強く実感しています。


また、今ある常識を疑って目線の転換をつくるのに最も分かりやすい標語が、「地方から東京へ」というものでした。この言葉は、自由な視点を持って配給展開することを意味していますが、他方こういった言葉を掲げること自体が、ビジネス的な観点からも、分かりやすく説明できるメリットを持っていると思います。


そして今、その面白さと手応えをすごく感じていますね。例えば、広島のコーヒー店の店主が映画を気に入ってくれて、『逆光』をブレンドコーヒーのメニューとして作ってくれたんです。これが飲んだらおいしくて、思い込みかもしれませんが、映画自体が持っているクリーンな口当たりも表現されていて、何だか陽射しも感じるんです(笑)。そういうふうに、この活動に携わってくれる広島の皆さんが何だかすごく楽しそうなんですよ。広島の劇場収入は大きくはないかもしれませんが、この活動が持っている力や残っていく記憶は確実に大きい。こんなにも可能性を持っているんだと、気づかせてくれましたね。


とにかくこの活動から生まれてくるものが予想外の連続で、映画を撮ることと同じくらい面白いんです。その自由度はある意味映画以上かもしれません。映画作りの段階で言うと、第0が脚本、第1が映画準備、第2が撮影現場、第3が配給で、今もまだクリエーションしてる気分ですね。





監督:須藤蓮

1996年7月22日生まれ、東京都出身。京都発地域ドラマ『ワンダーウォール』主要キャストの1人として出演。 NHK連続テレビ小説『なつぞら』、NHK大河ドラマ『いだてん』に吹浦忠正役 に出演。本作にて初めて監督を務める。 



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『逆光』

2021年7月17日(土)尾道にて先行公開、全国順次公開

制作・配給:FOL  制作協力:Ride Pictures  配給協力:ブリッジヘッド 

© 2021『逆光』FILM

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