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『逆光』須藤蓮監督 割り切り過ぎている世界とその危機感【Director’s Interview Vol.127】

『逆光』須藤蓮監督 割り切り過ぎている世界とその危機感【Director’s Interview Vol.127】

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25歳の俳優、須藤蓮。彼が監督として初めて手掛けた映画『逆光』は、その瑞々しく美し過ぎるまでの画が印象的だ。そして、その画の奥に刻まれているのは、今の世界に対する須藤自身の思い。本作では、須藤が俳優として主演したドラマ『ワンダーウォール』(18 ※20年に劇場版として映画化)の盟友、渡辺あやが脚本を務め、音楽には大友良英と、約60分の自主映画にしては超一流のスタッフが揃った。須藤はそんなスタッフに臆することなく、彼らとしっかり手を携え、珠玉の初監督作誕生へと導いている。


また須藤は、本作の宣伝・配給にも携わり、映画のロケ地である広島の映画館から上映をスタートさせるなど、日本映画界の常識を覆す興行にも挑戦中だ。


須藤が『逆光』で成そうとしているものは一体何か? 約1時間に渡り須藤本人からたっぷり話を伺った。



『逆光』あらすじ

1970年代、真夏の尾道。22歳の晃(須藤蓮)は大学の先輩である吉岡(中崎敏)を連れて帰郷する。 晃は好意を抱く吉岡のために実家を提供し、夏休みを共に過ごそうと提案をしたのだった。先輩を退屈させないために晃は女の子を誘って遊びに出かけることを思いつく。幼馴染の文江(富山えり子)に誰か暇な女子を見つけてくれと依頼して、少し変わった性格のみーこ(木越明)が加わり、4人でつるむようになる。 やがて吉岡は、みーこへの眼差しを熱くしていき、晃を悩ませるようになるが……。


Index


まるで純文学だった初稿



Q:映画『逆光』を構成する要素として、“70年代”、“恋愛”、“尾道”などがありますが、これらはどのように出て来たのでしょうか?


須藤:もともとは、渡辺あやさんと一緒に別の企画を準備していたんです。脚本もほとんど仕上がって、さぁ撮るぞ!というタイミングで、コロナで全てが延期となってしまいました。当時は結構ショックを受けまして…。そこから立ち直る方法を探っていたのですが、やっぱりそれは“ものを作ること=映画を撮ること”ではないかと。とはいえコロナ禍ということもあり、そんなに簡単に出来ることではないので、中編でもいいから何か撮れないだろうかと、渡辺さんにも相談していました。


そんなある日、「70年代の時代モノで尾道が背景だったら、書ける気がする」と、渡辺さんから急に連絡が来たんです。渡辺さんが書いてくれる!と、それだけで嬉しかったのですが、まだその段階では、なぜ70年代なのか、なぜ尾道なのか、よく分かっていませんでした。ただ、渡辺さんが書いてくれること自体がすごく大きなことなので、彼女の中で何かが見えているという、そのビジョンをとにかく信じました。


渡辺さんにあとで詳しく聞いたところ、もともと予定していた映画が現代モノだったので、それと被らないほうが良い、コロナ禍で東京では撮影できない、自主映画で予算を考えると、背景設計と衣装設計がしっかりできた方が良い、といった理由から、「尾道で70年代を撮る」ことを導き出したらしいです。



© 2021『逆光』FILM


Q:上がってきた脚本の印象はどうでしたか?


須藤:前述の連絡が来た後すぐに、渡辺さんと尾道で落ち合って、打合せやシナリオハンティングをしたんです。そこから帰って3日後ぐらいにはもう脚本が上がってきたので、その早さにまず驚きましたね。


実際に脚本を読むと、まるで三島由紀夫の短編小説を読んでいるかのような、純文学を読んでいる感覚に陥りました。人の吐息や曖昧な感情が繊細に織り込まれていて、見たことないようなシーンが羅列され、かつ曖昧に終わっていく。この脚本が映画化されると、みんなびっくりするだろうなと思いました。そして僕自身、この話がすごく好きでしたね。映画としての明確なビジョンが、すぐに浮かんだわけではないのですが、直感的にすごくときめきました。





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