日本映画で影響を受けたのは……
Q:今回、イシャナ(次女)はセカンドユニットのディレクター、サレカ(長女)は楽曲を提供しています。彼らの才能をどのように評価していますか。
シャマラン:彼らは生まれながらのアーティストなんだ。子供の頃から僕と芸術の話をして、どのように仕事で生かせばいいかを学んできたので、その成果を今、発揮している。僕はすでに旧世代のヴァンパイアで、彼らは新世代といった感じ(笑)。何にでも大胆にトライするし、最新のアーティストや流行、そして表現として「2020年の今ならこうでしょ」と教えてくれる。彼らを見ていると、芸術家は守りに入ったら終わりだと実感する。リスクを恐れないで挑戦し続けることで、永遠にヴァンパイアのように若さを維持できるのさ。
『オールド』© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
Q:舞台となるビーチでは、急速に時間が進む設定なので、各キャラクターの「変化」で、さまざまな演出が試みられています。
シャマラン:『ゴッドファーザー』シリーズ(72〜90)や『ムーンライト』(16)という前例があるように、一人の人物の若いバージョンと、年齢を重ねたバージョンでキャスティングを分けることは、比較的容易で、満足のいくものだった。
ただ難しかったのは特殊メイクだ。やりすぎた場合、時間もかかるし、監督としてメイクの下の俳優とのつながりに戸惑うことも多かった。だからできるだけメイクは軽いものに変えたよ。そのほか、特に子供たちの成長過程は、彼らの顔を意識的に出さず、腕や脚などのみを映像でとらえ、画角の「外側」を観客に想像させようとした。この点は、とてもうまくいったんじゃないかな。
Q:本作のスタッフやキャストに、事前に観せた映画があったそうですね。あなた自身が演出で参考にした作品は?
シャマラン:ニコラス・ローグの『美しき冒険旅行』(71)と、ピーター・ウィアーの『ピクニックatハンギング・ロック』(75)を観てもらった。僕自身もこの2つの映画を観直して、カメラの自由な動きや実験的なセンスを参考にしようとした。さらに日本映画の『藪の中の黒猫』(68)からは音楽の使い方で影響を受けた。民族的な打楽器が美しくも恐ろしいムードを醸し出す効果だ。『皆殺しの天使』(62)には知的な部分で刺激を受けている。まだ観てなければ、絶対にオススメだよ。