『シックス・センス』(99)以来、手がけた作品がつねに映画ファンに注目され、時には賛否両論も巻き起こす、M・ナイト・シャマラン。この新作『オールド』も、設定は大胆かつセンセーショナルだ。そのビーチに足を踏み入れると、異様なスピードで時間が進み、急速に老化が進んでしまう……。バカンスを楽しみに来た人々が信じがたい運命に立ち向かう本作は、シャマランらしい結末も用意する。
今回も劇場公開までに、詳しい内容は一切、秘密。そんなシャマランに、作品誕生のきっかけから、コロナ禍の下での撮影、ともに作品を作り上げた娘たちとの関係、さらに人生最後に観たい映画などを聞いた。相変わらず当意即妙、的確な答えがすぐに返ってくるシャマランであった。
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父の日のプレゼントが製作のきっかけに
Q:この『オールド』(21)は、グラフィックノベル「Sandcastle」が原作です。『スプリット』(16)で来日した際、次回作のために日本のコミックを探したいと話していましたが……。
シャマラン:いや、本当はあちこち探し回りたかったんだよ! 特定のタイトルを探すわけではなく、どんな作品があるかゆっくり見たかったけれど、残念ながら時間がなかった。ギレルモ・デル・トロがいくつものコミックショップに行くドキュメンタリーを見て、「僕もあんなことしてみたい」と嫉妬をおぼえていたのさ(笑)。今回の原作はフランス人の作家のもので、僕の心をざわめかせ、映像変換したいと思わせたんだ。
『オールド』© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
Q:この原作は、あなたの3人のお嬢さんたちからの、父の日のプレゼントだったとか。
シャマラン:そうなんだ。彼女たちは僕がグラフィックノベルが好きなのを知っていて、フィラデルフィアのコミックショップで、発行部数が少なそうなレアな品を「これならパパも知らなそうなのでプレゼントにぴったり」と、一瞬のひらめきで棚から見つけ出してくれたらしい。まさか次の映画の原作にするなんて、想像もしていなかっただろう。
Q:すぐに魅了されたわけですね。
シャマラン:本を開いて、冒頭のシークエンスから引き込まれた。とても挑発的で、物語が進むにつれて夢中になってしまう感覚だ。あるビーチで時間だけが速く進んでしまう。実際には何が起こっているのか? それが「概念」として僕の心を支配したのさ。