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『メインストリーム』ジア・コッポラ監督、いまのSNSは怪物的【Director’s Interview Vol.148】
誰もが発信者であり、ある日突然スターになれる可能性を持った“いま”。SNS上における「注目されたい」「RTやいいねがほしい」という欲望は、現代社会においてもはや三大欲求に近しいものといえるのかもしれない。もちろんそこには、誹謗中傷という現代病も付きまとうのだが……。
私たちが暮らすこのカオスないまを、鋭い筆致で描き出した映画が誕生した。人気ユーチューバーとして成り上がっていく男と、仕掛人たちの“業”をえぐり出す『メインストリーム』(10月8日公開)だ。
映像作家になる夢を叶えられずくすぶるフランキー(マヤ・ホーク)は、不思議なオーラを持つ男リンク(アンドリュー・ガーフィールド)と出会う。ふたりは作家志望のジェイク(ナット・ウルフ)を引き入れ、YouTubeで動画投稿を開始。「ノーワン・スペシャル」と名乗るリンクの過激な行動はネット上で注目され、インフルエンサーになっていくのだが……。
衝撃的な展開が待ち受ける野心的な物語を生み出したのは、フランシス・フォード・コッポラの孫であるジア・コッポラ監督。『パロアルト・ストーリー』(13)に続く長編第2作で、彼女は何を描こうとしたのか。本人の思考に迫る。
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SNSが“怪物”になっていくのを目撃できた世代
Q:作中のSNSに対する主観性と客観性のバランスが絶妙でした。ジア監督は1987年生まれで、アナログ世代とデジタル世代のちょうど狭間の世代といえるのではないでしょうか。ご自身は、ネットとの距離感をどう見ていますか?
ジア:おっしゃる通り、生まれたときからSNSがある世代ではなかったからこそ、興味を抱いて見ていました。最初は「こういうものを共有できるんだ」という楽しみを感じていましたが、SNSはそこからどんどん成長していって、怪物的な存在になっていった。その過程を目撃できたことは大きかったですね。本作にも、その経験を反映しています。
若い世代にとってはSNSは欠かせないものになっていますが、自分が若い頃にSNSに吸い込まれた生活を送らなくてよかったなとも感じます。
『メインストリーム』©2020 Eat Art, LLC All rights reserved.
Q:ジア監督は映画業界で生まれ育ち、常に注目を浴びる立場を経験されているかと思います。SNSの台頭において、本作のノーワン・スペシャルのように一般人が突如スターになる機会が生まれた反面、人々の承認欲求は肥大化しているように感じますが、ご自身はこうした変化をどう見ていますか?
ジア:技術の発展によって誰もがクリエイティブになれて、創作物や自分自身を披露できるのは素晴らしいことだと思います。ただそこには危険が潜んでいて、ちゃんと心の準備を整えて自分のエゴをコントロールできないと、日々がSNSに吸い込まれてしまう。それぞれに自制心がちゃんとあるか、そこは心配な一面ではあります。
人間はSNSの台頭以前から「有名になりたい」「知名度を得たい」という願望を持っていて、同時に有名人を崇拝するところがある。ただ私自身は、昔から「なぜそうなるのか?」という疑問、或いは興味を感じていました。