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『かそけきサンカヨウ』今泉力哉監督 脚本が全てではなく現場で起こることを優先する【Director’s Interview Vol.150】

『かそけきサンカヨウ』今泉力哉監督 脚本が全てではなく現場で起こることを優先する【Director’s Interview Vol.150】

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感情が複雑に存在している原作の魅力



Q:これから一緒になる家族が初めて会って食事をするシーンが、個人的にすごく好きでした。志田さんと義母の連れ子の小さな女の子は、お互いに少し緊張しているけれど、二人とも同じような境遇だから、実はあの二人は気持ちが通じ合っているのかなと、何となくそんな気がしたんです。あとで「初めて見た時、(小さな女の子が)ちっちゃな怪獣みたいって思った」という志田さんのセリフも出てきますが、二人はこれから姉妹になるんだということを、感覚的に受け入れていた気がしました。


今泉:新しいお母さんが連れ子と一緒に来ると言うと、そこに確執があったり憎悪の気持ちが出てきてしまったりするのが、普通のドラマの作り方だと思うのですが、でも窪さんの小説の場合は、それだけじゃなくて、そこにどうしても存在してしまう愛情もしっかり描かれるんです。新たな母を迎えるという大きな葛藤はあるにしても、まさに今おっしゃったみたいに、「初めて会った時に怪獣だと思った。でも、この子が妹になると思うと、なんか嬉しかった」みたいなセリフが、それを象徴していると思います。



『かそけきサンカヨウ』© 2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会


小さい時に出ていった母親への思いも同じですよね。なぜ自分を置いて出ていったのかという気持ちもあるけれど、一方で画家である母親の画集を持っていたり、母親のことを色々と調べてもいる。迷いもあるし愛情もある。一人の人間の感情が単純に一つじゃなくて複雑に存在しているのが、この原作の魅力だと思います。だから、あの食事シーンを好きだと言ってもらえるのはすごく嬉しいですね。





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