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『かそけきサンカヨウ』今泉力哉監督 脚本が全てではなく現場で起こることを優先する【Director’s Interview Vol.150】

『かそけきサンカヨウ』今泉力哉監督 脚本が全てではなく現場で起こることを優先する【Director’s Interview Vol.150】

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※本記事は映画本編の詳細に触れているため、気になる方は映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


現実でも映画でも刺激的な物事にあふれる昨今、これほどまでにやさしい物語に触れたことがあっただろうか。そう思うほど、映画『かそけきサンカヨウ』はやさしさと温もりに満ちあふれていた。人気作家、窪美澄の短編を映画化した本作は、今泉監督ならではの語り口はそのままに、心やさしい登場人物たちが、物語を静かにそして確実に牽引していく。主演の志田彩良と井浦新をはじめ、菊池亜希子や鈴鹿央士、そして石田ひかりと、役者たちが奏でる感情の機微にも驚くばかりだ。


映画『かそけきサンカヨウ』は、まるで今泉監督をまた一歩進化させたような、新たな一面を見せてくれた気がしてならない。そんな今泉監督に、本作について話を伺った。



『かそけきサンカヨウ』あらすじ

幼い頃に母が家を出て、ひとりで暮らしを整えられるようになっていった陽(志田彩良)は、帰宅してすぐに台所に立ち、父・直(井浦新)とふたり分の夕飯の支度にとりかかるのが日課だ。ある夜、父が思いがけないことを陽に告げる。「恋人ができた。その人と結婚しようと思う」ふたり暮らしは終わりを告げ、父の再婚相手である美子(菊池亜希子)とその連れ子の4歳のひなたと、4人家族の新たな暮らしが始まる。新しい暮らしへの戸惑いを同じ高校の美術部に所属する幼なじみの陸(鈴鹿央士)に打ち明ける陽。実の母・佐千代(石田ひかり)への想いを募らせていた陽は、それが母であることは伏せたまま、画家である佐千代の個展に陸と一緒に行く約束をするが・・・。



Index


監督自ら推した原作



Q:今回はこれまでの今泉作品と比べて、さらに静謐さに磨きがかかったような、そんな映画に仕上がっていたと思います。とても静かで優しく、それでもぐっと心の中に入ってくる。ご自身の中で(これまでと比べて)何か意識されたことはありますか?

 

今泉:今回は「この原作を映画化したい」と自分から言ったのが始まりです。原作には、父娘ふたりの静かな時間が流れていて、映画化する際もそこは大事にしました。キャスト陣も、「静かなトーンでやってください」などと言わなくても原作に近い温度でやってくれたので、それに相当助けられましたね。他にもゲイリーさんの音楽しかり、全体のトーンが自然と原作に近くなっていったと思います。



『かそけきサンカヨウ』© 2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会


Q:監督から原作を推されたんですね。


今泉:そうなんです。窪さんの小説のファンで色々と読んでいたのですが、その中で出会ったのがこの短編でした。ただ最初は、いろんなプロデューサーに映画化を相談しても、短編ゆえ話が小さくなるということで、難色を示されたことが多かったですね。今回の映画化はそんなこともあり、陸が主人公の別の短編と合わせて今の形になっています。


これまでも『愛がなんだ』(19)や『アイネクライネナハトムジーク』(19)など、原作物の映画化をやらせて頂いたのですが、長編小説を2時間の映画にまとめる際は、サイドエピソードや小さい話は、どうしても落としていかざるを得ない。だから次は逆に、短い小説を長編映画にしてみたかったんです。





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