グアンタナモ収容所をリアルに再現
Q:私はグアンタナモ収容所に行ったことはありませんが、収容所の様子や空気感にリアリティを感じました。監督はドキュメンタリー作品も手掛けてらっしゃいますが、演出の手法などで工夫されたことはありますか?
マクドナルド:私は映画を作るとき、事前に徹底的なリサーチを行います。今回の場合はグアンタナモで何が起きていたのか、その真実を観客に伝えなければならないので、モハメドゥの助けを借りながら、膨大なリサーチをしたんです。
自分が収監されていた部屋やグアンタナモ収容所全体の絵を、彼に描いてもらいました。さらに色、音、匂いについて、そこでの現実がどんなものだったのかをできるかぎり取材して、世界観を作り上げていきました。
Q:もちろんグアンタナモ収容所は一般には公開されてないわけですよね。
マクドナルド: はい、ただし、一部のジャーナリストには公開されていて、私も行こうと思えば、訪れることはできたのです。でも行きませんでした。というのは、現在のグアンタナモ収容所は、アメリカの他の刑務所と変わらない新しいデザインになっているからです。
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当時モハメドゥが収容されていた建物は、数週間で突貫的に作られたユニークな施設で、今はもう残っていません。だから収容所の情報はモハメドゥの記憶を頼りにしています。
Q:グアンタナモ収容所を迫真性をもって描くために、工夫されたことは何でしょうか?
マクドナルド: もちろん全体をリアルなタッチで統一したいと思っていましたし、現実に忠実であるような表現を心がけました。
ただ拷問のシーンだけはシュールで、現実感のないタッチで描いています。というのは、あまりリアルに描きすぎることで、観客がスクリーンから目を背けるようなものにはしたくなかったからです。だから拷問のシーンだけはモハメドゥの内面に入っていくような、映像表現をしています。