10月30日から開催される第34回東京国際映画祭。「Japan Now」から名称を改めた「Nippon Cinema Now」部門では、“これから世界に打って出る才能”として吉田恵輔監督の特集上映が行われる。
吉田監督が衝撃のデビュー作『机のなかみ』(07)を世に送り出して14年。一貫して人間のろくでもない愚かしさや煩悩に共感を寄せ、悪意と優しさを絶妙にブレンドさせる独自の作風を磨き上げてきた。また、常に自分発信の企画を商業ベースで成立させるという、現在の日本映画界では特異ともいえる道を切り開いてきた人物でもある。
今年はすでに『BLUE/ブルー』と『空白』と2本の新作が公開され、いずれも絶賛を浴びている中での特集企画。熱狂的なファンを持つ一方で、まだ世間的評価が追いついていないとも言える天才監督にとって、今回の特集上映はどんな意味を持つのか。その心境を本人に伺った。
※吉田監督の『よし』は土に口です。
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俺って映画祭に選ばれるような人?
Q:今回の特集では『ヒメアノ~ル』(16)と『BLUE/ブルー』と『空白』が上映されます。わりと近年の作品が並んだ形だったので、ファンとしては初期作から総ざらいするような大特集も期待していました。
吉田:まあ、3本でもいいんじゃないですかね。あんまり(本数が)多いと俺も稼働が増えるし。上映が7日あったら7回会場に行かないといけなくなって、俺のオシャレだってすぐ尽きちゃいますから(笑)。
『ヒメアノ~ル』予告
Q:監督は2007年のデビュー以来、長編を11本発表されています。
吉田:はい。あと、もう一本完成はしてますね。
Q:充実したキャリアだとは思いつつ、吉田作品を評価する人たちの熱量ほどには、世間の評価が追いついてなかったとも思うんです。
吉田:その状態は今も継続中ですね。正直、今回(の特集)にもめちゃくちゃ違和感はあります。何か謎の力が働いてるというか、今でも「俺って映画祭に選ばれるような人?」って思いながらここに座ってますから(笑)。