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『リスペクト』リーズル・トミー監督 偉大なる「ソウルの女王」を、本人の遺志を守って映画に【Director’s Interview Vol.159】

© 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

『リスペクト』リーズル・トミー監督 偉大なる「ソウルの女王」を、本人の遺志を守って映画に【Director’s Interview Vol.159】

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レジェンドとなった人の生涯は、後世にまで語り継がれるべきだ。しかし、多くの人にリスペクトされている存在を、そう簡単に映画にするわけにもいかない。“ソウルの女王”アレサ・フランクリンの映画も、長い間、可能性が模索されてきた。アレサ自身が「自分の映画を作るなら、あなたで」と、『ドリームガールズ』(06)のジェニファー・ハドソンに直々に打診したのが、今から15年も前のこと。しかし映画化のタイミングはなかなか訪れないまま、2018年、アレサはこの世を去ってしまった。


アレサの遺志がついに叶えられたのが、この『リスペクト』だ。監督を任されたリーズル・トミーは、本作が長編映画デビュー作となるが、これまでもブロードウェイなどで舞台ミュージカルの演出でキャリアを積み、「ウォーキング・デッド」などの人気TVシリーズでも監督を務めてきた。何より、アフリカ系(南アフリカ生まれ)で女性であるという点が、アレサの人生を再現するうえで、うってつけだったと考えられる。


そのリーズル・トミー監督に、偉大なる「ソウルの女王」の映画化へのアプローチを聞いた。


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黒人女性シンガーの映画は白人男性が監督だった



Q:アレサ・フランクリンの映画が、ようやく完成したという印象です。


リーズル:私もそう感じます。ここまで製作に時間がかかったのは、アレサが自分の役をジェニファー(・ハドソン)に演じてほしいと固執し、なおかつ、ある程度の大作にしたいという要望があったからです。自身の華やかな人生を観てもらう上で、大きなスクリーンで映してほしかったのでしょう。ですから、タイミングが難しかったのです。


そして「ようやく」という意味で、メジャースタジオでの黒人女性の伝記映画を、同じ黒人女性が監督するのは、今回が初めてではないでしょうか。過去の『ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実』(72)、『TINA ティナ』(93)は、監督が白人男性でしたから。その分、実現に向けて乗り越えるハードルが高かったわけです。



『リスペクト』© 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved. 


Q:あなたが本作を監督できたのは、ここ数年のハリウッドの潮流によるものなのでしょうか。


リーズル:2020年だから、私が監督を任されたのだと実感しています。しかも本作は脚本家も黒人女性です。ようやくハリウッドは、描く題材に対して、どんな監督や脚本家が手がけるべきか、その専門性やリアリティの大切さを認識するようになりました。これまでよく言われたのは「女性監督は経験が浅い」という弁解でした。でも、そもそも女性監督は経験を積むチャンスが閉ざされていたのです。ここ数年、女性監督の作品がヒットを続けているので、チャンスの扉はどんどん開いていきそうですね。


Q:その専門性という点で、これまでのミュージカルでの経験も本作に生かされているわけですね。


リーズル:はい。舞台のミュージカルを演出してきたので、映画でも音楽の使い方にこだわりました。音楽にキャラクターや人間関係をどう語らせるか。そこが重要だと思いましたし、このアプローチは、まさにミュージカル的ですよね。これまでのミュージシャンの伝記映画は、曲のパートの分量が少ないと感じていたのも事実です。


また、リハーサルのシーンを描く作品も多くなかったので、私はそこを積極的に取り入れました。リハーサルは、私の経験上、たがいに意見をぶつけ合ったり、理想の曲ができずにフラストレーションが募ったりと、ドラマの宝庫です。ミュージシャンのリアリティを描くうえで最適ですし、演劇的な演出ができるので、私の志向の表れです。




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