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『ディア・エヴァン・ハンセン』スティーヴン・チョボスキー監督 ミュージカル+青春映画の新たな地平を求めて【Director’s Interview Vol.164】
ライブ録音の方が絶対に観客の心に響く
Q:過去のミュージカル映画との共通点でいえば、『レ・ミゼラブル』(12)と同じように、本作では俳優たちの歌を撮影しながらライブ録音し、その音源を使ったシーンが多いそうですね。
チョボスキー:ライブ録音の方が、よりリアルに聴こえると思います。生の舞台を観るとき、原音ゆえの本物らしさ、真実味が伝わりますよね? 同じように映画の観客に伝えるためには、ライブ録音がベストな方法です。これはセリフにも当てはまり、歌でのアプローチも同じことなのです。
Q:では『ディア・エヴァン・ハンセン』の歌のシーンは、100%ライブ音源なのですか?
チョボスキー:いや、95〜98%くらいです。300人のエキストラが体育館で動き回っているシーンなどでは、さすがに主人公の歌だけをカメラを回しながらライブ録音することは不可能でした。ただ、そうしたシーンでも俳優には全力で大きな声で歌ってもらい、その録音の断片を使ったりしています。ですから映画の「ほとんど」がライブ音源と言ってもいいでしょう。
『ディア・エヴァン・ハンセン』© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
Q:映画版用に新しい曲が追加されました。
チョボスキー:撮影が始まる2年くらい前から、プロデューサーや、原作者で脚本家のスティーヴン・レヴェンソン、パセック&ポール(作詞作曲を手がけるベンジ・パセックとジャスティン・ポールのコンビ)、そして新曲を担当したアマンドラ・ステンバーグと話し合いを重ね、映画化において、いかに親密さを失わないかに心を砕き、その役割を果たす2つの新曲を完成させました。
Q:その他に、舞台版と映画版の大きな違いはどこでしょう。
チョボスキー:ブロードウェイ版は2幕構成でしたが、映画は第3幕も用意しました。エヴァンの告白の動機も異なっています。この変更を脚本家も受け入れてくれ、私も満足しています。映画版の方が、物語がより完全なかたちで終わっているんじゃないでしょうか。もちろん舞台版独自の演出もすばらしいですが、映画版ならではのエンディングを作ることができ、うれしく思っています。