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『ディア・エヴァン・ハンセン』スティーヴン・チョボスキー監督 ミュージカル+青春映画の新たな地平を求めて【Director’s Interview Vol.164】

© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

『ディア・エヴァン・ハンセン』スティーヴン・チョボスキー監督 ミュージカル+青春映画の新たな地平を求めて【Director’s Interview Vol.164】

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俳優ありきで、役の設定を変更することも



Q:脚本を読んで引き受けたということですが、キャスティングなどには関わっていないのでしょうか?


チョボスキー:キャスティング段階から深く関わっています。これまでの私の作品もそうですが、キャスティングにはつねに誇りを持っていますし、すばらしいキャストを集め、彼らと話し合いながら仕事をするのが、私は大好きですから。


Q:映画版のキャストは、舞台版以上に多様性が感じられるので、そこは意識したのかと……。


チョボスキー:たしかに意識しましたが、そうしたルールを押し付けられたわけではありません。多様性の達成自体が目的ではなく、キャスティングをオープンにしたのです。さまざまなバックグラウンドの俳優に広く門を開き、時間をかけてキャスティングしました。その結果、舞台版ではユダヤ人だったジャレッド(エヴァンの学内での唯一の話し相手)が、インド系アメリカ人のニック・ドダニになったりしたのです。


Q:キャスティング優先で、役の設定が変わったりもしたのですか?


チョボスキー:はい。ダニー・ピノに会って、ぜひ出演してもらいたくて、ラリー役(コナーの父親)について2時間かけてミーティングを行い、役の設定を「義理の父親」に変更したのです(ダニー・ピノはキューバ系なので、コナーら子供たちと血がつながっている実父に見えない)。そんな風に「すばらしい俳優がいたら、この作品にぴったりはまるように調整しよう」というのが、みんなの一致した意見でした。



『ディア・エヴァン・ハンセン』© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.


Q:主人公エヴァン役のベン・プラットは、舞台版のオリジナルキャストでもありますが、舞台と映画の演技アプローチなど、どのように模索、演出したのでしょうか。


チョボスキー:ベンは、開幕前のワークショップも含めると、600回か700回くらい、エヴァン役を演じた経験があります。その経験は私にとって「宝の山」で、キャラクターを理解するうえで助けになりました。じつは私は、彼の舞台での演技を観ていません。ですから逆に、真っ白なキャンバスから始めることができたのです。ベンには、自分の直感に従って演じてもらいつつ、それを私が映画向けに調整するというプロセスでした。1,000人の観客に向けた演技経験が、一転してダイニングルームでの一人の演技に変わるわけですから。


Q:具体的には、ベン・プラットにどんな提案をしたのですか?


チョボスキー:「キャラクターをさらに探求してほしい」「いろいろなテイクを試してほしい」ですね。つまり、「一つの正しいバージョンがあるはずだ」と、プレッシャーを感じてほしくなかったのです。舞台で600回、700回と演じていれば、おそらく特別に最高な仕上がりの公演があったはずで、その他の公演は完成への「プロセス」として演じていたと思うのです。だから私は、そのプロセスの方で演じてほしいとベンに伝えました。最終的に彼は「完璧を目指さない」ことによって、完璧な演技を披露するという、最高の結果をもたらしてくれました。




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