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『ディア・エヴァン・ハンセン』スティーヴン・チョボスキー監督 ミュージカル+青春映画の新たな地平を求めて【Director’s Interview Vol.164】
コロナ禍での孤独感が、作品にプラスに働いた
Q:基本的な質問ですが、ミュージカル映画と、そうでない映画で、何か演出上の違いがあるのですか?
チョボスキー:特に大きな違いはないですね。セリフだけのシーンも、歌のシーンも、同じように取り組んでいました。どちらもキャラクターを表現するわけですから。私たちはこの映画を「歌のあるドラマ」と呼んでいたんです。それも小文字の「musical」と同じニュアンスです。もちろん先ほど例に挙げた「シンシアリー・ミー」のように、意図的に大がかりに派手にしたシーンはありますし、私はミュージカルを愛していますが、歌が入ることで、どこか現実味が失われるリスクも承知しています。でも私は、この物語を人間的で共感できる、正統派のものにしたかった。セリフも歌も同じように聴こえ、どちらも真実を語る役割になるよう心がけました。
『ディア・エヴァン・ハンセン』© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
Q:舞台から映画へと移る間に、世界は新型コロナウイルスのパンデミックを経験しました。『ディア・エヴァン・ハンセン』という作品の受け止められ方も変わると感じていますか?
チョボスキー:たとえばこの作品で描かれるメンタルヘルスや、SNSの落とし穴の問題は、すでにブロードウェイ版でも大きく扱われています。そこにパンデミックの影響が加わったことで、観客はさらに深くこれらの要素を受け取るようになるでしょう。その意味で、これは予想外でしたがタイムリーな作品になったと感じます。
Q:撮影自体もパンデミックの中で行われたんですよね?
チョボスキー:これは、北米においてパンデミック中に撮影を行った最初の作品です。すべてのショットをその状況下で撮影しました。あの時、われわれ全員が、自分の家の中に隔離され、孤独な時間を送っていました。その長い孤独感が、作品に何かを付与したと思います。ジュリアン・ムーア(エヴァンの母親役)は、3週間アパートから出られず、限りない孤独を感じていたそうで、その経験が役に生かされました。ほとんどの人が、半年間仕事ができず、一方で仕事をしなくてはならない焦りがあったので、撮影現場に来られるだけで感謝の気持ちでいっぱいになっていました。時には(感染の)恐怖と闘いながらの撮影でしたが、今となっては多くの苦労がいい方向に動いたことを、心からうれしく感じています。
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監督:スティーヴン・チョボスキー
作家、監督、脚本家。自身のデビュー小説の映画化作品『ウォールフラワー』(12)でインディペンデント・スピリット賞、GLAADメディア賞、ピープルズ・チョイス・アワードを受賞、全米脚本家組合賞にもノミネートされ、原作小説は2年以上にわたりニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・リストにランクインした。ディズニーの実写映画『美女と野獣』(17)では脚本の共同執筆を担当、R・J・パラシオの小説が原作のドラマ映画『ワンダー 君は太陽』(17/ジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソン出演)でも脚本を共同執筆し、監督も務めた。人気ミュージカルの映画化『RENT/レント』(05)では脚本を担当、2019年10月には2作目となる小説「Imaginary Friend」を発表、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・リストにランクインしている。
取材・文:斉藤博昭
1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。
『ディア・エヴァン・ハンセン』
11.26(金)ロードショー 配給:東宝東和
© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.