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『偶然と想像』濱口竜介監督 「有りそうで無い」ものから「無さそうで有る」ものへ【Director’s Interview Vol.170】

『偶然と想像』濱口竜介監督 「有りそうで無い」ものから「無さそうで有る」ものへ【Director’s Interview Vol.170】

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「有りそうで無い」から「無さそうで有る」へ



Q:日常の中から出てきた事と関係するのかもしれませんが、どのエピソードも何かしら「性的」なものを感じさせるところも印象的でした。


濱口:日常の中には「性」もあるという、ただそれだけかと思います。日常ってパブリックなものだけで営まれているわけではなくて、プライベートな領域もあるわけですよね。そういうものも取り扱わないと、単純に現実を取り扱っているような気がしないと思うんです。


Q:そういうところから現実が見えてくる。ということでしょうか?


濱口:ただ、リアルな現実を描こうと思っているわけでもないんです。実際、どの話も結構アンリアルな展開になっていきますし。誰かが誰かを好きだとか、誰かが誰を欲望するとか、誰もが多少覚えがある性的な傾向みたいなもの、それ自体は普通にあることが、「偶然」というものでこんなにも発展して行く。先ほど言われた「有りそうで無かった」ものを「無さそうで有る」ものにする。そこまで持って行きたいなと思っていました。



『偶然と想像』©2021 NEOPA / fictive


Q:どのエピソードにも(本人たちが)意図せぬユーモアが発生します。非常に面白かったのですが、笑わせようとしていないことが意外でした。


濱口:自分でも書いている時は笑ってたりするんですが、一方で観客を笑わるのはとても難しいので、笑わせようという演技指導は一切しないですね。


Q:確かにそうですね。振り返ってみると、本人たちは至って真面目にやっているからこそ、そこが面白かったのかもしれません。


濱口:笑わせようとは特段思っていないのですが、それでも毎回起こる笑いというものがあって、それは、すごく真面目な人間同士、一生懸命やっている人間同士がすれ違う瞬間なんだと思うんです。「偶然」というものをテーマにすると、そのズレみたいなものがすごく起こりやすくなったような気がしています。


偶然が起こってしまったことによって、現実的にありそうなんだけど「いや、ないかも」「いや、あるかも」というようなその感じが笑いと結びついている。「いやいや、そんなことないだろう」と、笑うことによって受け入れていくというか、そういう流れがあったような気がしますね。





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