1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『偶然と想像』濱口竜介監督 「有りそうで無い」ものから「無さそうで有る」ものへ【Director’s Interview Vol.170】
『偶然と想像』濱口竜介監督 「有りそうで無い」ものから「無さそうで有る」ものへ【Director’s Interview Vol.170】

『偶然と想像』濱口竜介監督 「有りそうで無い」ものから「無さそうで有る」ものへ【Director’s Interview Vol.170】

PAGES


話が進むにつれて上げた「偶然の度合い」



Q:一つ一つの話を観ていくうちに、この「偶然と想像」の世界に徐々に馴染んでいく感覚がありました。3つのお話の順番はどのように決められたのでしょうか。 


濱口:シリーズ全体としては七話として考えていますが、今回はシリーズ全体の入門編みたいなところもあるので、まずはスムーズに入ってきて欲しいというのがありました。その意味では、三つの話の流れは入りやすく、且つ一番面白くなるように考えました。


一話目はまず分かりやすい話。誰もが見たことのあるような、恋愛における三角関係。これは理解しやすいですよね。二話目はそこから少しダークな話になっていて、その分、三話目では反転して気持ち良く終えることができる。シリーズの1本目としては気分良く映画館を出られるような流れを考えていました。


また、話が進むにつれて、偶然の度合い、有り得なさが上がっていくようになっています。観ていくうちに、この映画は偶然が起きる世界なんだなと、観客がだんだん理解して、偶然が起こることを受け入れてもらえるようにしました。偶然が起きるということは、ご都合主義的で観客が醒めてしまったりする要素もはらんでいるので、徐々に慣れてもらうようにしたんです。



『偶然と想像』濱口竜介監督


Q:積み重ねられる言葉、セリフの応酬に引き込まれますが、脚本はどのように作られたのでしょうか?

 

濱口:ただただセリフをひたすら書いていくというスタイルですね。ト書きは最低限しかないです。箱書きといって、起こる出来事と大まかな流れ(箱)は最初に決めるのですが、その箱を埋めていく時にダイアローグを書いていきます。そのとき「ある種の現実感みたいなものを自分が感じながら書けるかどうか」を大事にしています。


何か考えて書くというよりは、登場人物に何か話させる感じですね。「その人物たちが自分の意思で喋るとしたらこんな感じだろう」と書いていって、箱書きで書いておいた出来事が、その人物たちが自発的に発した言葉や行動で成立したら次の箱に移る。そういう書き方をしています。


Q:ちなみに撮影現場でのアドリブはあるのでしょうか? 


濱口:セリフに関してはほとんどないと思います。メインの登場人物が出てくる以外のシーンでは、即興的にやっているところもありますが、個々の一対一の会話などはほぼ全部書いた通りですね。


Q:役者さんはあの長いセリフを全部覚えているのですね⁉︎


濱口:そうです。役者さんというのはすごいですよね。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『偶然と想像』濱口竜介監督 「有りそうで無い」ものから「無さそうで有る」ものへ【Director’s Interview Vol.170】