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『プックラポッタと森の時間』八代健志監督 コロナ禍で止まった刻を見つめる【Director’s Interview Vol.180】

『プックラポッタと森の時間』八代健志監督 コロナ禍で止まった刻を見つめる【Director’s Interview Vol.180】

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必要なのは職人的なバランス感覚



Q:ロケコマ撮りの大事なポイントや、面白いところはどこですか。


八代:大事だと思ったのは、バランス感覚ですね。例えば、太陽の巡りを考えれば、理論上、一定のペースで正確にシャッターを切れば影が綺麗に流れる映像が撮れる。しかし実際には、決めた時間のタイミングで雲がきて太陽が陰ったり、風が吹いて草が暴れたりする。そういう時は一定のペースに囚われず、少し待ってからシャッターを押した方が滑らかに感じたりする。ゼロか100かで完全なコントロールをするのではなく、コントロールできないことを受け入れてバランスをとる感覚が必要でした。その感覚をフル稼働して、毎コマ、シャッターを切るタイミングを決断していきます。「いまだ!カシャっ」って感じで。


他にも、例えば人形を支える竹串が見えていても、風がある日は地面の下草が揺れてパラパラするから気にならないこともある。そういう時は竹串を隠すため時間を、風の強弱を選ぶことに使った方が見た目は綺麗な動きになったりする。


最初の1秒分くらいを撮影すると、風と雲と地面の感じから、その日そのカットをどのくらいで安定させるべきかが見えてくるんです。これはダメ、このくらいならOK!というその日の基準が見えてきます。風や光を読む職人技って感じがして、そこがすごく面白かったかな。


Q:面白いですね。カットごとにその日のその場の条件で演出を決めていくというか。


八代:そういう生き物として自然な感覚が、ちゃんと出来上がりに繋がっていくのが楽しかったですね。



『プックラポッタと森の時間』(C)TAIYO KIKAKU Co., Ltd./TECARAT


Q:それでいうと最後のプックラポッタが去っていくシーンは木漏れ日が流れていくだけでなく、走る距離も長くてかなり難易度が高いですよね。


八代:実際あのシーンはすごく難しいカットで、何テイクも撮っています。他のシーンはロケーション優先でカットの内容を決めて繋げていったのですが、あの辺はシナリオをまとめあげる頃に「こういうシーンを撮ろう」と事前に決めて撮りました。ヨリヒキが数カット必要なシーンなので、あの画を撮るために1週間か2週間の間、毎日同じ場所に通っていました。


Q:ジャンプしながら走る難しい動きですが、何度もやっているからアニメーションが熟練しているんですね。


八代:そうですね。上手いよね(笑)。でも実は、走りのような速い動きはごまかしが効きやすいんです。ゆっくりした動きの方が難しい。





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