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『プックラポッタと森の時間』八代健志監督 コロナ禍で止まった刻を見つめる【Director’s Interview Vol.180】

『プックラポッタと森の時間』八代健志監督 コロナ禍で止まった刻を見つめる【Director’s Interview Vol.180】

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10年前から心の中にいたプックラポッタ



Q:プックラポッタの由来を教えてください


八代:プックラポッタは、コビトの種族名です。僕の空想の、ですが。古くから言い伝えられてきた感じにしたかったので、文字でなく音で伝承されていた言葉を意識しました。音で伝わると濁音と半濁音がはっきりしません。字にした時「ぽ」と「ぼ」どちらも正解、そんな言葉になる。日本に古くから伝わる「コロポックル」「デイダラボッチ」などがそうです。その語感を意識して考えたのが「プックラポッタ」でした。


ちなみに、プックラポッタを考えたのは約10年前です。『薪とカンタとじいじいと』(13)という作品を作った時に、別案として架空のコビトのお話を考えました。自然観や、プックラポッタが見える見えない等の設定はその頃からあります。


ABC天気予報のおじいさんや、『眠れない夜の月』もはっきり名前は出してないけど、自分の中での設定はプックラポッタという種族のお話です。『眠れない夜の月』を企画する時には、別案として『プックラポッタと森の時間』の原型のようなお話も考えていました。



『プックラポッタと森の時間』(C)TAIYO KIKAKU Co., Ltd./TECARAT


Q:それは人間とプックラポッタが邂逅するようなお話だったんですか?


八代:まさにそう。アイデアの出ない脚本家が山奥の別荘にカンヅメになったが、何も書くことがなくて毎日釣りに明け暮れていたら、ある日釣竿の糸がなくなっていて、不思議に思ってカメラを仕掛けたらコビトが糸を盗んでいた……みたいな話だった。企画を出せ出せと急かされていた時に、反抗的な気持ちでひねり出した企画でした。(笑)


Q:その時からすでに、プックラポッタがゆっくりした時間を生きていて人間の時間とズレているという設定はあったんですか?


八代:それはまだありませんでした。今回の作品は、コマ撮りであることを前面に出せたことで「コマ撮りだからゆっくり」と「森の時間だからゆっくり」のダブルミーニングが生まれました。すこし複雑なロジックだったんですが、自宅近くの建築現場の様子を撮ってみたら「人間の世界はめまぐるしい」という概念がはっきりして、ダブルミーニングが通じるようになったかなと思います。


実のところ、森の時間もぜんぜんゆっくりじゃなかったんですがね(笑)


Q:コマ撮りであることも人形であることも全部開示していて、観客もそれをわかって見ているのに、引きこまれる。従来のコマ撮り作品の中では珍しい構造ですよね。


八代:これは嘘ごとだ、とわかった上で楽しむことこそ、コマ撮り映画の醍醐味だと思います。





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