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『プックラポッタと森の時間』八代健志監督 コロナ禍で止まった刻を見つめる【Director’s Interview Vol.180】

『プックラポッタと森の時間』八代健志監督 コロナ禍で止まった刻を見つめる【Director’s Interview Vol.180】

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研ぎ澄まされる情報の中で、曖昧なものも大事にしたい



Q:本作は配信で観ることができます。配信だからこその利点や、見てもらいたいポイントはありますか。(2022年2月15日よりアマゾンプライムビデオ、iTunesほかにてデジタル配信開始。※詳細は各配信サービスまで)


八代:粗探しできるところですね(笑)。今回は合成やCGによる消し込みを一切していないので、一時停止すると人形を支えてる棒とかバレものが見え放題です。


通常はそういうのを排して綺麗な映像に仕上げる習慣なので、消した方がいいんじゃないかという意見もあるけど、アリじゃないかなと僕は思っています。というのも、棒が見えていたりすることで「ああ、これは人が手で作っているんだ」ということが目に見えてわかるでしょう。舞台裏を隠しすぎないことで出てくる画面の外にある空気感が、これからはCGや他の技法と棲み分けるために必要な、コマ撮りの魅力になっていくんじゃないかな。


Q:確かにバレものは見えますが、それによって気持ちが離れることはなかったですね。人形劇で操り人形の糸が見えているけど、そういうものだと思って見る感じに似ています。


ではこれからご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。


八代:この作品を作るきっかけはコロナだったけれど、重い雰囲気を纏った作品にしたくなかった。今は声を大にして言いづらいけど、コロナ禍にも良い側面があったことに気づいたり、認めたりするきっかけになって、何年か後に、みんながこの頃のことを話しやすい雰囲気になった時に「こういうことあったね」と、ほんわかと振り返られる最初の一投というか、きっかけになれたら嬉しいです。



『プックラポッタと森の時間』(C)TAIYO KIKAKU Co., Ltd./TECARAT


Q:実は私も、ステイホーム期間は当時1才の娘と過ごしていたのですが、それまでは夫と一緒に育児をすることがなかなか出来なかったので、こういう時間が持ててよかったなぁと感じました。でもなかなか人には言えないことでした。『プックラポッタと森の時間』には、あの時間を幸せだったと言ってもいいんだよ、と背中を押してもらえた気がします。


最初の緊急事態宣言からまもなく2年になりますが、コロナに対する向き合い方も変わってきています。今感じていることを教えてください。


八代:コロナをきっかけにしてリモート会議が主流になったり、データを介したコミュニケーションが発達したのは良いことだと思います。ただ、そのデータは伝えやすい形ーー離れた場所でもやりとりしやすいように、誰にでも分かりやすくシンプルなものが良いとされている。でも、それだけが情報ではないと思うんです。


僕は言葉にしても絵にしても、本当に伝えたい曖昧な部分がなかなかスパッと表現できない。僕は情報の骨格だけじゃなくて、骨にくっついたちょっとした肉や汚れや凸凹のニュアンスもなんとか伝えたいと思ってるんだけど。だから最終的に映像にするんです。


今は情報がどんどん研ぎ澄まされて、シャープな情報だけが活きるコミュニケーションに変わってきていると感じています。僕の曖昧な作品を見た人が、スパッと端的な言葉に翻訳してSNSで皆に伝えてくれたり、そういう良い面もあると理解しつつも、曖昧な雰囲気やアナログでやってきた人間としては、この先うまく、データ化の良さも活かしながら、曖昧なものが削ぎ落とされないコミュニケーションに進化していければいいなと願っています。


Q:本当の意味でのデジタル化ーー情報を削ぎ落として間のものを無くしてしまう意味でのデジタル化が、コロナ禍を通してすごく進んだってことですよね。八代監督作品にはどれも「見えないけどそこにあるもの」というテーマが根底にあると思います。目に見えているものはデジタル情報化しやすいから、今はそればかりが先行して、データ化できないものは無いことになってしまう社会になりつつある、というのは感じます。


八代:それを、無いことにしない社会になるといいね。





監督:八代健志

東京芸術大学デザイン科卒業。太陽企画にて実写を中心にCMディレクターとして活動する傍ら、様々な手法のストップモーションアニメーションも扱ってきた。2015年TECARATを立ち上げ、人形アニメーションに軸足を移す。脚本・監督のほか、美術、アニメート、人形造形なども手がける。材料の素材感を重視した美術で、ストップモーションアニメーションならではの映像を目指している。



取材・文: 阿部靖子

1988年生。フリーランスのストップモーションアニメーター。「Eテレプチプチアニメ ワーキングボーシーズ(レストラン編)」「Netflix リラックマとカオルさん(19)」「Honda ORIGAMI(18)」などにアニメーターとして携わる。八代健志監督の「眠れない夜の月」「ノーマン・ザ・スノーマンシリーズ」にもスタッフとして参加した。コマ撮りアニメの魅力を伝えるブログ「コマコマ隊のコマドリル」運営メンバーとしても活動中。




『プックラポッタと森の時間』

第76回毎日映画コンクール・アニメーション部門大藤信郎賞受賞作品

2022年2月15日(火)デジタル配信スタート

(C)TAIYO KIKAKU Co., Ltd./TECARAT

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