衝撃、圧巻、傑作、度肝を抜かれる、すごい…、絶賛の声に溢れる映画『さがす』。既に今年ナンバーワンに推す声も多く、何より観客も映画も熱量が高い。動員数は4万人に迫る勢いで、19館の拡大公開も始まり、大ヒットへの道を爆進中だ。
練りに練られた脚本、片山監督の骨太な演出、俳優陣の鬼気迫る熱演、などなど、『さがす』の面白さを構成するものは沢山あるが、それらをスクリーンに描き出す「強度の高い画作り」も大きな魅力の一つだ。撮影を手掛けた池田直矢氏に話を伺うと、ルックやテクニックを超えたところにある“ものづくりの本質”に気づかされる。『さがす』を撮った現場では一体何が起きていたのか?
Index
- 片山監督とじっくり話したことがない
- 脚本を設計図として信用しない
- 少人数スタッフの意義
- ポテンシャルが引き出される理由
- “今やりたいこと”を実現させる
- 『さがす』を撮ったデジタル一眼と300円のレンズ
- 自分の中から出てくるものを大切にしたい
片山監督とじっくり話したことがない
Q:『岬の兄妹』をはじめ、片山監督とはタッグを組まれることが多いと思いますが、『さがす』の話があったのはいつ頃でしたか?
池田:プロットを読んだのが『岬の兄妹』の完成直後です。2ページほどでしたが、それがとても面白かったんです。すごく暑い季節の中で、電車の中で殺人犯を見た父親の話でした。そこの部分だけでも撮りたいと話した記憶があります。
その後正式に話をもらったのは、撮影の一年前くらいかな。その辺が曖昧なのは理由がありまして、実は片山さんとは二人でじっくり話しことがあまり無いんです。「こんなふうに撮影したい」と説明を受けることがほとんどなく、「池田さん、やりますんで。よろしくお願いします」みたいな感じでした(笑)。片山さんはお酒を飲まないので、飲んで話したりもしないんですよね。
『さがす』池田直矢撮影監督
Q:実際にやることが決まって、脚本を読んだ感想はいかがでしたか?
池田:最初に読んだ脚本はまだ初稿でした。時系列と登場人物が入り乱れていて、少し複雑だなという印象でした。以前に読んだプロットが頭の中に強く残っていて、それとは違う話のように思えてしまい、脚本はそれほど面白くは感じなかったんです。
ただ『岬の兄妹』のときも、脚本が最後まで完成していない状態で撮影したので、今回もその初稿が全てではないだろうと思ってはいました。
Q:初稿からは色々と変わるだろうと。
池田:そうですね。脚本も変わっていきますし、ロケハンをしたりキャストに会ったりしていくうちに、僕自身の中でも脚本のイメージがどんどん変わっていくんです。それもあって、最初の段階では脚本を読むこと自体にあまり没頭はしないですね。