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『シラノ』ジョー・ライト監督 何度も語られた有名な物語を、新たなスタイルで今届ける意味【Director’s Interview Vol.183】

© 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

『シラノ』ジョー・ライト監督 何度も語られた有名な物語を、新たなスタイルで今届ける意味【Director’s Interview Vol.183】

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ミュージカルの演出はアクションシーンに近い



Q:最近のミュージカル映画は、ライヴレコーディング(撮影時に歌われた音源をそのまま使う)が多くなっていますが、本作もそうですか?


ライト:そうです。映画の中で歌い始めるというのは、作り物だと感じさせるリスクを負います。一方で、俳優がカメラの前で歌うときは役になりきっていますから、そこには強い感情が込められます。その瞬間の歌こそ、より自然な流れになると考えました。歌自体はもちろん、息継ぎの音、口の中で破裂する音、苦しみながら出す音なども取り込みたかったのです。


これはアクションシーンの演出にも似ています。曲のどこでカットするか、すべてを計算して臨む必要があるからです。ライヴレコーディングで撮る日は、本当にエキサイティングな気持ちになりましたね。


Q:ライヴレコーディングでは、大勢のシーンなどで苦労も多いと思いますが……。


ライト:セリフの録音と一緒ですよ。いちばん大変なのは、歌そのものよりも背景からのノイズを自然につなぐことでしょう。その点では、私が25年間一緒に仕事をしてきた、音響編集者が最高の仕事をしてくれました。



『シラノ』© 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.


Q:そしてミュージカルという点では、ダンスの部分も斬新です。振付は日本でも人気のシディ・ラルビ・シェルカウイ(森山未來らが出た「テ ヅカ TeZukA」「プルートゥ PLUTO」などの振付家)ですね。


ライト:シェルカウイとはこれまでも何度か仕事をしています。最初に組んだのが私の監督作『アンナ・カレーニナ』(12)で、この作品は全体をバレエのように捉え、彼に振付を頼みました。その後、私も演出に参加した舞台作品で一緒になり、今回の『シラノ』でも振付を依頼しました。


シェルカウイは独自の感性をもった振付家で、魂の深い部分から動きを創作します。だから我々は常に心を動かされてしまう。間違いなく世界でも有数のアーティストでしょう。


Q:主演の2人はオリジナルの舞台版も経験していますが、彼らの演出について、あなたならではのアプローチはありましたか?


ライト:私は撮影前のリハーサルを重視するタイプで、今回も3週間のリハーサルを行いました。その間に彼らが舞台で培った演技を一度忘れさせる必要があったのです。映画のためにまったく違うアプローチを構築した感じですね。舞台と違って映画は俳優の目の奥まで観客に感知されます。そうした細部をリハーサルで模索したのです。ロクサーヌは何を知っているのか。シラノはどこまで彼女を愛しているのか。彼らは何かを直感的に理解したのか。それらを本能レベルで表現してもらうことを、私は俳優たちに求めました。




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