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『ブルーサーマル』橘正紀監督 アニメは「全部描く」もの。だからこそリアリティに執着する【Director’s Interview Vol.189】
スピルバーグ作品と共に歩んできた映画遍歴
Q:橘監督がアニメ業界を目指したきっかけはどのようなものだったのでしょう?
橘:元々は漫画家になるか、映画を作りたかったんです。それで学生の頃は漫画の持ち込みをやっていたんですが、そのときにちょうど東映アニメーションが入社試験をやっていて。映画は作りたいけど、実写映画だと修業期間が長そう。でもアニメーションだったらそこまでではないだろうという動機です(笑)。当時の東映アニメーションは演出試験というものがあって、それをパスすればすぐになれるじゃん!と生意気にも思っていたんですね。そこでアニメの世界に足を踏み入れました。
Q:橘監督の映画遍歴、ぜひお聞きしたいです。
橘:子どものころはドラマよりもアニメばかりを観ていました。そしてアメリカの映画。ちょうどレンタルビデオが流行りだした時期で、父親がビデオデッキを買って、週末になると映画を借りてきて観ていました。『グーニーズ』(85)や『インディ・ジョーンズ』(81〜)など、スティーヴン・スピルバーグ監督関連の映画をすごく好きで観ていましたね(※『グーニーズ』ではスピルバーグ監督は製作総指揮を務めた)。『ジョーズ』(75)は怖くて子どものころはなかなか観られず、後から観ましたが(笑)。
Q:スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、クリス・コロンバス等々……。
橘:はい。その辺のメジャー作品をよく観ていました。あとは学校の映画鑑賞会で観たウォルフガング・ペーターゼン監督の『ネバーエンディング・ストーリー』(84)。公民館の大きなスクリーンで観たんですが、すごく感動しましたね。
『ブルーサーマル』© 2022「ブルーサーマル」製作委員会
Q:素敵なお話ですね。橘監督はジャンルでいうと、ファンタジーがお好きなのでしょうか。
橘:そうですね。「こんな世界本当にあるんだろうか?」「どうやって撮っているんだろう?」と思うのは最初だけで、観ているうちに物語に引き込まれちゃうんです。そういった、世界に没頭できる感じに子どもながらに憧れて、こういうものが作れるんなら自分もやりたい!と思っていました。
その後高校に上がって、ジェームズ・キャメロン監督の作品を観たり、当時ものすごく期待して観に行った『ジュラシック・パーク』(93)に衝撃を受けたり……。本当にそこに恐竜が生きていて、動いてる!と感動して、「人を楽しませる映画を作りたい」という思いがますます強くなりました。そういった感覚は、今もありますね。自分の子どもが小学2年生なのですが、自分の子どもにも見せられるものを作りたいです。