©2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会
『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』信友直子監督 偶然発見した映像によって結晶した21年間の記録【Director’s Interview Vol.196】
目指したのはVRとして体感できる映画
Q:前作の分と合わせると、素材はどれくらいあったのでしょうか?
信友:60分テープが120~130本ありました。途中でカメラが壊れて、データで記録するカメラになってからもかなり回しました。
Q:素材を全てラッシュ(試写)するだけでも膨大な時間が必要ですね。
信友:そうですね。特に今回、母が亡くなっていく話だから、精神的にかなりきつくて。弱っていく母の姿を映像で見ていると、だんだん顔に死相が出てくるんです。だから私は見ていられなくて、編集マンに一人で見てもらった部分もあります。
『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』©2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会
Q:膨大な素材の中から構成を組み立てていく中で、こだわったポイントはありますか。
信友:今回は「看取り」とか暗い話になるので、登場人物が冗談を言っているところとか、落ち込んだ後に「ふっ」と笑えたりとか、そういう要素を大切にしました。あと前作もそうなんですが、お客さんには映像を見るというよりは、一緒に信友家に上がり込んだように感じてもらえるといいなと。感情のダイナミズムをお客さんにも一緒に体感してもらえる作りを目指しました。
Q:確かに信友監督の主観映像で構成されているので、VRっぽい感覚がありました。
信友:そうなんです。ロールプレイングゲームみたいな(笑)。
Q:監督がカメラのこちら側から被写体に話しかける場面が多いのも、そういった効果を増幅させていますね。
信友:それは意識しました。