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『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』信友直子監督 偶然発見した映像によって結晶した21年間の記録【Director’s Interview Vol.196】

©2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会

『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』信友直子監督 偶然発見した映像によって結晶した21年間の記録【Director’s Interview Vol.196】

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監督が映像に写り込むどうかの判断



Q:信友監督があるシーンで自分が鏡ごしに写りこんだ時、「あ、写っちゃった」って言っていたのが印象的でした。


信友:母が美容院に行くシーンですね。


Q:例えば『なぜ君は総理大臣になれないのか』(20)、『香川1区』(21)の大島新監督は、画面の中に積極的に登場するスタイルです。逆に信友監督は、画面の中に写るのは避けたいと考えているのでしょうか。


信友:恥ずかしいんです(笑)。親を撮っておいて、自分は写りたくないとか言うのもアレですけど(笑)。なんでだろう。でもあの時はホント本能的に「写っちゃった」って思いましたね。


Q:カメラのこちら側から声はかけるけど、自分の姿が出るということに関しては非常に慎重なんだなと。


信友:それを言われたの初めてですね(笑)。『香川1区』の大島監督の場合は、自分が事象に巻き込まれていく過程も描きたいから画面に出ているのだと思います。私の場合は巻き込まれるというよりは、「娘の視点」を優先させたいというのがあるかも知れません。でもカメラを置いて、私も出演したシーンもあるんです。特に前作ではカメラを置いて、私が父と話をしたり、布団の中の母を起こしたりしました。ただ、家の中が狭いからカメラを置く場所があまりないんです(笑)。引きの絵が撮れるところがない。あとは私自身がカメラの後ろにいる方が安心なのかな…。



『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』©2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作委員会


Q:印象的だったのは、お母様を病院で看取るシーンです。ベッドの脇にカメラを置いて、お父様の後ろ姿と信友監督が写っている。信友さんの手を離れたカメラの映像になった時、私は一瞬とても不安定な気持ちになったんです。


信友:あの時は母にちゃんとお別れを言いたいのと、家族3人でどうやってお別れしたかをちゃんと描くべきだと思い、私も登場人物になりました。その後のお葬式はカメラマンに撮ってもらったので、私も写っているんですが、自分で撮りたくないというよりも、そんな時に自分で撮っていたらさすがにヒンシュクだろうと思ったんです。呉は狭い街ですから、「あそこの娘は親の葬式まで自分でカメラを回しよる」って言われたくないから、カメラマンを呼んだんです。


Q:私はそのシーンまでで、すっかり信友VRが心地よくなっていたので、急にVRゴーグルを外されたように感じたのかもしれません(笑)。信友さんは撮影が上手いと思います。見ているとだんだん心地よくなっていくんです。


信友:自分で撮っているときはいつもそうなんですが、彼なり彼女の精神世界の中にダイブする・・・って言うとカッコよすぎるけど(笑)。取材している人と一緒にダイブしていくような、たゆたうようなイメージですね。構図的にきれいな映像よりも、その時の気持ちを入れたカメラワークにしたいと思っています。





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