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『神は見返りを求める』吉田恵輔監督 人間のいい部分と悪い部分両方描かないと気持ちが悪い【Director’s Interview Vol.217】

『神は見返りを求める』吉田恵輔監督 人間のいい部分と悪い部分両方描かないと気持ちが悪い【Director’s Interview Vol.217】

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現場の必須アイテム“ぬいぐるみ”



Q:次回作はどんな映画になりそうですか?


吉田:次はもう一回重く戻します。テーマ的には『空白』の続編みたいなものを書いていて、このまま無事に進めば来年には撮れるかなという感じ。その後はまったく違う方向性のものを撮りたいと思って、いま脚本を書いているところです。そこから先は真っ白ですね。


『神は見返りを求める』は一昨年に撮影して、初号ができたのが去年の2月。その時点では『BLUE/ブルー』も『空白』も公開されてなかったんで、未公開の新作が三本待機してる状態だったんです。だから世間の評価はちょっと上がってるかも知れないけど、去年も今年も映画を撮ってないんで、自分の中では限りなくニートなんですよね。


Q:でも、そろそろ立場的に、若い世代の映画監督から先輩として扱われるようになってきてませんか?


吉田:いやあ、先輩ですよね。もう人生の三分の一は監督やってるんだもんね。でも自分は好きなことしかやってこなかったし、結構いい加減だから、わりと業界では自由人みたいに思ってもらってる感じはありますね。ただ時代的に、嫌われないように気をつけないと。俺が現場でいつもぬいぐるみ持ってるのも、ぬいぐるみハラスメントって書かれるかもしれないし(笑)。


『神は見返りを求める』©2022「神は見返りを求める」製作委員会


Q:現場でいつもぬいぐるみ持ってるんですか? 


吉田:いつも持ってますよ。『愛しのアイリーン』(18)の時は、木野花さんがビビりながらほかのスタッフに「あれはなんなの?」って聞いてました(笑)。主演のナッツ(・シトイ)はフィリピンから来た子だったんで「日本の監督はみんなぬいぐるみ持ってて、出世すると色が変わっていくんだよ」って教えてたのに、「ノーノーノー」って絶対に信じてくれなかったですけど。


Q:なんのために持ってるんですか?


吉田:威厳のなさをアピールしたくて。だって、ぬいぐるみ持ったまま、スタッフを怒鳴ったりできないじゃないですか。『麦子さんと』(13)の頃からずっと同じ青いぬいぐるみを美術さんに預けてあって、いつも現場に持ってきてもらうんです。


Q:確かにハラスメント対策になりますね。ほかでも採用して欲しいクレバーなやり方だと思います(笑)。


吉田:でも『BLUE/ブルー』の時だけはポケモンのぬいぐるみを持ってたんで、「肖像権に引っかかるからメイキングのカメラを回せないよ!」って怒られました(笑)。



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監督・脚本:吉田恵輔

1975年5月5日生まれ、埼玉県出身。東京ビジュアルアーツ在学中から自主映画を制作する傍ら、塚本晋也監督の作品の照明を担当。2006年に自らの監督で『なま夏』を自主制作し、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門のグランプリを受賞。2008年には小説「純喫茶磯辺」を発表し、同年、自らの監督で映画化して話題を集める。近年の主な作品は、『ヒメアノ~ル』(16)、『犬猿』(18)、『愛しのアイリーン』(18)等がある。昨年公開された『BLUE/ブルー』『空白』では、第34回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞にて監督賞を受賞し、また『空白』は、第76回毎日映画コンクール・脚本賞、第43回ヨコハマ映画祭では作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞と4冠に輝いた。



取材・文:村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。




『神は見返りを求める』

6/24(金)TOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイント他 全国ロードショー

配給:パルコ

©2022「神は見返りを求める」製作委員会 


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