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『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』ポール・サルツマン監督 ビートルズの映画だが、若者の自分探しでもある【Director’s Interview Vol.238】

© B6B-II FILMS INC. 2020. All rights reserved

『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』ポール・サルツマン監督 ビートルズの映画だが、若者の自分探しでもある【Director’s Interview Vol.238】

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1968年2月、世界を席巻していたポップ界のスーパースター、ザ・ビートルズの4人は心の平安を求め、母国イギリスを離れてインド北部のリシケシュ近郊にある、マリハシのアシュラム(僧院)に飛んだ。超越瞑想運動の創始者マハリシ・ヨーギーに学ぶためである。これはビートルズのファンには有名なエピソード。というのも、喧騒から遠く離れたこの地で、プレッシャーから解放された彼らは“オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ”“ディア・プルーデンス”をはじめとする多くの名曲を創作したのだから。


時を同じくしてカナダからインドにやってきた23歳の若者が失恋の心の傷を癒すべく、アシュラムの門を叩く。ビートルズが滞在中だからとの理由で中に入れもらえなかった彼は門の前のテントで8日間を過ごしたのちに入院を許され、瞑想を学ぶ同志としてビートルズのメンバーと一週間、交流を重ねた。その若者の名はポール・サルツマン。彼はカナダに帰国後、映画やテレビのディレクター、プロデューサーとしてキャリアを重ねていった。


映画『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』は、サルツマン本人が監督を務め、当時の体験を振り返ったドキュメンタリーだ。世界中が揺れていた1968年、偶然にもビートルズと出会った彼は、瞑想で得た心の平安とともにジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターと言葉をかわし、決してメディアには見せない彼らの素顔を写真に収めていた。本作の元になったのは、このときのサルツマンの写真と記憶に残るエピソード。79歳となった彼がこの映画で伝えたかったものは何か? サルツマンの声を聞いてみよう。


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インドでの瞑想体験で人生が一変!



Q:『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』は、どんな映画にしようと思って作ったのですか?


サルツマン:まず、私は優しい映画を作りたかった。誠実であり、隠し事もなく、観客に何かをストレートに感じさせる、そんな映画だ。私はこれまで多くの作品に関わってきたが、自分の経験を題材にした映画は2本しかない。しかも今回は自分が出演してカメラの前で話すという初めての経験をした。そういう意味では少々恥ずかしかったし、どう撮るべきかというとまどいはあったね。


Q:1968年の体験談は、まず帰国後から32年後の2000年に、本として出版されていますね?


サルツマン:そのとおり。初めての30分の超越瞑想で失恋や傷心の辛さを超えられたのは本当に貴重な体験だった。映画の中で語られているエピソードではあるけれど、それは自分にとって人生を変える大きな出来事だったので、素晴らしいそのメソッドについて記しておきたかったんだ。今でこそ瞑想やヨガは一般的に知られているけれど、当時は非常にマイナーなものだったので、紹介する価値があると思った。そして出版と同時に、私の体験はこのとき一度終わったんだ。

 

『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』© B6B-II FILMS INC. 2020. All rights reserved


Q:そのときの体験を、改めて映画にしようと思ったのはなぜですか?


サルツマン:映画で紹介した通り、発端は娘が当時の記事や写真を発掘したことで、私にあのときの体験を思い出させたことだ。じつは最初の妻とはインドで知り合ったけれど、ビートルズと過ごしたことについては、彼女に一度も話したことがなかった。30年来の親友にも話したことがなくて、ある日、1968年にマハリシのアシュラムでの体験のことを話したら、“今まで一度もそんなことを話してくれたことがなかったよね?”と言われて“そうだっけ?”と答えてしまった(苦笑)。アシュラムでの体験はそれほどまでに私にとってプライベートであり、また自分の中でひと区切りを付けた昔話でもあったので、長い間、他人に語る気はなれなかった。今回映画でそれを語ることになったのは、自分を変えてくれた素晴らしい体験を今改めて伝える価値があると思ったからなんだ。もちろん、自分のしたことを声高にアピールするものであってはいけない。瞑想と同じように、触れた人の胸にスーッと入っていく、そんな作品にしたかった。





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