共犯性を面白さに
Q:チャレンジングな象徴のひとつが麻生久美子さん演じる漆原だと思います。麻生さんのコメディタッチの熱演はもちろんですが、そのときの周囲の人たち(特に警察犬チームの面々)の配置の仕方や編集での挟み込みは相当計算されているように感じました。特に岡山天音さんの立ち位置がすごく良かったですね。
オダギリ:おっしゃるとおり、天音くんや本田翼さんなど外側がどう見るかによって、彼らはツッコミにもなるしボケにもなる。それが、視聴者が共感できるものにもなるし「こういう見方ですよ」という説明にもなる。中心にあるボケを周りがどう見るかというのは、コメディにおいてとても重要だと思います。例えば、オリバーと一平のやりとりを「何やってんだ?」って遠目に見ている漆原の表情があること自体がめちゃめちゃ重要だったりもする。その辺は気を付けていますね。
Q:お芝居に関してはアドリブなしだったようですね。
オダギリ:ほとんどないですね。あるとしたら、くっきー!さんの関西弁くらいかな。僕は標準語で脚本を書くので、方言のニュアンスは任せるんです。そこに多少のアドリブが入ったりしますが、あとはもう99%脚本どおりじゃないですかね。
ドラマ10『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』シーズン2 Copyright NHK (Japan Broadcasting Corporation). All rights reserved
Q:“けしからん”と思われるような発言をオリバーがして、一平が「お前一回ものすごく怒られろ!」と楽屋的ツッコミをするところは爆笑しました。あの辺も全て脚本に盛り込まれているのでしょうか。
オダギリ:そうですね。全てセリフとして脚本に書いています。テレビって、視聴者との距離感の近さに良さが有ると思っているんです。映画は暗闇でスクリーンに向かいますが、テレビは生活の延長で観れますからね。特に今の時代はSNSでつっこみながらドラマを見たりしてますよね。そういったテレビ独特の見方ができることを強みと捉えた方がいい。だから、裏側の意見のようなメタ的な言い方をさせて、フィクションとノンフィクションを混在させた作り方で距離を詰めているんです。
Q:最近は四角四面になりがちな傾向にあるので、ちょっと息苦しいかなと思ってしまうこともある。オリバーはそこをうまく立ち回っていると思いました。
オダギリ:どうなんですかね。犬だから許される裏技みたいなものですよね(笑)。あとは、ピー音を鳴らして「ああ、NHKだもんね」って、視聴者を敢えて作り手側の気持ちに引っ張っちゃう。ある種の共犯性とでもいいましょうか。そういうところもこのドラマの面白さだと思っています。このドラマだからこそ作れる笑いみたいなものが多いのは確かですね。