ものづくりを続けるということ
Q:前回お話を伺った際は「現場がものすごく苦しくて監督業は辛い」と聞きましたが、今回はいかがでしたか?
オダギリ:シーズン1の時は精神的な余裕がなくて現場でご飯が喉を通らなかった。それで結果的にすごく痩せ細ったのですが、今回の現場では人並みに食事が取れました。多分制作チームが、僕に食べさせようとしてましたね。「あの人ほっといたら食べないから、ちゃんと食べさせてくれ」みたいな指示が出てたんだと思います(笑)。でもそうやって実際に食べられていたという事は、それほど自分を追い込むこともなく力の抜きどころを覚えたのかもしれません。そこは成長と言えるのかなと。
前回は現場を飛び回っていろんなスタッフに指示を出したりして、俳優とゆっくり話す時間もなかった。一方で今回はスタッフに任せるところは任せるなりして、結構余裕が持てました。今回はスタッフが総入れ替えになっていて、『ある船頭の話』(19)の演出部のチームが来てくれたんです。優秀なチームだし、一度オダギリ組を経験している事もあって、僕がやりたいこともちゃんと理解してくれる。そういったやりやすさも助けられた部分だと思います。
スタッフの話でいうと編集作業でもエピソードがあって、永瀬正敏さん演じる溝口が住んでるマンションが、前回と今回の撮影の合間に色が変わってしまい外壁が真っ青になっちゃったんです。今回の話は前回の10日後という設定だったので、編集で全部色を戻してもらいました。そういう表にはわかりづらいスタッフの大変な努力が実はたくさん入っています。編集や仕上げチームは前回同様、僕の好みや癖も分かってきてくれているので、いろいろと提案もしてくれましたし、すごくやりやすいチームになって来てますね。
Q:前回は「次また撮りたいとはとても簡単には言えない」とも言われていましたが、こうして少しずつ慣れてくることにより、また監督業をやっていきたいという思いは出てきましたか。
オダギリ:「オリバーな犬」は幸運にも反応が良くて、結果的に挑戦を認めていただけましたが、そこに甘えてばかりもいられない。居心地の良い場所でのものづくりは最善とは言えません。新たな挑戦をするためにはやっぱり新たな作品を作らなきゃいけないし、そこには何かしら新しい壁や敵も出てくる。それなりに大変な勝負になるとは思いますが、でも、ものづくりを続けるということはそういうことだと思っています。大変な道に向かうとしても作りたいものが出てくれば、その時は新たな勝負をするんだろうと思います。
脚本·演出·編集·出演:オダギリジョー
1976年2月16日生まれ、岡山県出身。03年、黒沢清監督の『アカルイミライ』で映画初主演を果たす。以降、俳優として数々の作品に出演。北村龍平、崔洋一、西川美和、松岡錠司、石井裕也、犬童一心、阪本順治、山下敦弘、中野量太、鈴木清順、井筒和幸、冨永昌敬、三木聡、中島哲也、三谷幸喜、是枝裕和、青山真治、園子温、李相日、キム·ギドク、ユー·リクウァイ、カン·ジェギュ、ジェニー·シュン、クリストファー·ドイル、ロウ·イエなどなど、国内外問わず数多くの映画監督の作品に出演している。自身での監督作は『バナナの皮』、『フェアリー·イン·メソッド』(ともに自主制作短編)、『さくらな人たち』(09/中編)。連続ドラマ「帰ってきた時効警察」(07)第8話では脚本、監督、主演の3役を務めた。『ある船頭の話』(19)で初の長編映画を監督。第76回ヴェネチア国際映画祭·ヴェニス·デイズ部門に選出された。
取材·文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ·ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
ヘアメイク:砂原由弥(Yoshimi Sunahara)
スタイリスト:西村哲也(Tetsuya Nishimura)
ドラマ10「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」シーズン2
【放送予定】 10月4日<第6話>
公式Instagram:https://www.instagram.com/nhk_oliver
番組公式HP:https://www.nhk.jp/p/ts/ZPZJP2WJ9R/
NHKプラス:https://plus.nhk.jp/watch/pl/49326bd2-7e44-4384-9a10-14bef1fdb5af
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