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『天間荘の三姉妹』北村龍平監督 今の自分にしか撮れないものを【Director’s Interview Vol.252】

『天間荘の三姉妹』北村龍平監督 今の自分にしか撮れないものを【Director’s Interview Vol.252】

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のん、門脇麦、大島優子が並ぶ爽やかなビジュアル、映画『この世界の片隅に』(16)の製作スタッフが贈る感動大作という触れ込み、そして監督は北村龍平。『VERSUS』(01)『ゴジラ FINAL WARS』(04)『ミッドナイト・ミート・トレイン』(08)などなど、北村監督の作品を見続けてきた者としては、この組合せは正直驚いた。そして実際に観てさらに驚くことになる。北村監督のカラーはそのままに心に響く内容に仕上がっており、最後にはつい涙腺も緩んでしまう。オールスターキャストの役者陣も素晴らしく、本作の世界観を説得力のあるものに押し上げる。


観賞後、監督やジャンルへの偏見を猛省させられた。実際にこれまでも心に響く作品を観せてもらっていたのは事実なのだ。演出力はジャンルを超えることを見事に証明した北村監督だが、一体どんな思いでこの作品に挑んだのか?話を伺った。



『天間荘の三姉妹』あらすじ

天界と地上の間にある街、三ツ瀬。美しい海を見下ろす山の上に、老舗旅館「天間荘」がある。切り盛りするのは若女将の天間のぞみ(大島優子)だ。のぞみの妹・かなえ(門脇麦)はイルカのトレーナー。ふたりの母親にして大女将の恵子(寺島しのぶ)は逃げた父親をいまだに恨んでいる。ある日、小川たまえ(のん)という少女が謎の女性・イズコ(柴咲コウ)に連れられて天間荘にやってきた。たまえはのぞみとかなえの腹違いの妹で、現世では天涯孤独の身。交通事故にあい、臨死状態に陥ったのだった。イズコはたまえに言う。「天間荘で魂の疲れを癒して、肉体に戻るか、そのまま天界へ旅立つのか決めたらいいわ」。しかし、たまえは天間荘に客として泊まるのではなく、働かせてほしいと申し出る。そもそも三ツ瀬とは何なのか? 天間荘の真の役割とは?たまえにも「決断の時」が刻々と近づいていた。


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クリエイターとして衝撃を受けた原作



Q:原作マンガ『天間荘の三姉妹 ―スカイハイ―』を映画化したいと思われた理由をお聞かせください。

 

北村:原作の髙橋ツトムさんとは付き合いが長くて、兄弟と呼び合いリスペクトしあっている仲なんです。僕は普段アメリカに住んでいますが、東日本大震災が起こったときは仕事で日本に来ていました。一人で来日していたので、髙橋さんがご自宅に呼んでくれて震災後しばらくはお世話になっていました。それから数ヶ月後、彼が言ったんです。「今は戦後みたいに大変な状況になっているけど、今の日本人はすぐに忘れてしまう。被災地と離れた東京にいるだけで忘れてしまうし、時間が経てばもっと忘れていく。でもそうじゃないだろう。それを作品で伝えたい」と。その時点では彼自身も具体的に何をやるのかは分かっていなかった。でも二年後にはこの原作を描くことになっていく。



『天間荘の三姉妹』©2022髙橋ツトム/集英社/天間荘製作委員会 


ボランティアで現地に飛び込んでいった人たちも素晴らしいし、寄付をする人も素晴らしい。ドキュメント映像を撮る人も素晴らしいと思う。被災地に対して色んな応援の仕方がある中で、自分が生み出すフィクションで何かサポートしたいとは僕はなかなか言えなかった。それを髙橋さんは、ゼロから作った世界観で、今起こっていることに対してメッセージを投げかけようとしている。同じクリエイターでも正直俺には言えないなと思っていました。それで実際に出来たのがこの原作だったんです。読んだ時は衝撃を受けました。どうしても映画化したいと思いましたね。





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