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『マジック・マイク ラストダンス』スティーブン・ソダーバーグ監督 魅惑のライブショーに触発されて三作目を決意【Director’s Interview Vol.290】
労働と生活を描くこと ※ネタバレ注意
Q:あなたは過去に何度も経済にまつわる題材を扱ってきました。最初の『マジック・マイク』も2008年に起きた金融危機が背景にあり、『ラストダンス』は悪化を続ける世界の経済格差が関連しています。そういった問題を水面下で反映させることは、この三部作において気にかけてきたことなのでしょうか?
ソダーバーグ:僕はずっと、人がどうやって生活の糧を得るのかに興味を抱いてきた。どんな作品に関わる時も、最初に知りたいと思うのはキャラクターがどうやって食い扶持を稼ぎ、家族を養っているのか。それって僕らの人生ですごく大きな比重を占めているよね。僕らは人生の大部分を、仕事か、仕事探しに費やしている。僕にとってはそれがキャラクターに入り込む入り口になる。
最初の『マジック・マイク』で楽しかったのは、普通じゃない生業で生きることについて考えられたことだった。その道で秀でていること自体が奇妙で、給料をもらえるのも奇妙な職業についてね。僕の感覚でいえば、そういう要素こそが映画を面白くするんだ。
『ラストダンス』は楽しさにあふれた作品だけど、僕らが生きている現実の世界に根ざした物語でありたい。観客にも、自分以外の誰かがどうやって家賃を払っているのか、僕と同じくらい関心を持ってくれるいいなと思う(笑)。労働や生活を描いても、人を落ち込ませない映画を作ることはできる。労働は憂鬱な話題じゃないし、とても興味深いものだからね。
『マジック・マイク ラストダンス』© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
※注意、以下のやりとりは『マジック・マイク ラストダンス』の重要なネタバレを含みます。
Q:経済的な格差や断絶といった問題は扱いつつも、超富裕層を告発するような作品にはなっていませんよね。
ソダーバーグ:そうだね。過剰に裕福な人たちが、格差を是正するためにできる努力を怠っている現実は確かに存在していると思っているよ。ただ少なくとも、この映画の文脈でそういう問題を前面に押し出しても、僕たちが語りたい物語の後押しにはならないと思ったんだ。もちろん映画の中の一要素ではあるんだけどね。
サルマが演じたキャラクターは、破産するかも知れない危機に直面する。僕らがその状況で描こうとしたのは、彼女が経済的な安定や日々の平穏か、より自分らしく生きるかの選択を迫られることだった。そして最終的に、彼女は正しい決断をするんだ。
これは完全に映画のネタバレなんだけど(笑)、僕の頭の中では、あの後の彼女は豪奢なタウンハウスを売って、マイクと一緒に僕がロンドンで観たようなライブショーを立ち上げて、うまくやっているんだと思ってる。あくまでも僕の頭の中でだけど、それが映画の後日譚なんだ。だからサルマが財産をなげうつ選択をするのも、決して絵空事のハッピーエンドとしては描いてはいないつもりだよ。見せかけだけの偽物じゃない、リアルなハッピーエンディング。少なくとも僕はそう考えながらこの映画を作ったんだよ。
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監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本家/監督/プロデューサー/撮影監督/編集者と多彩な顔をもつ。2001年、監督を務めた『トラフィック』(00)で米アカデミー賞監督賞を受賞。同年は『エリン・ブロコビッチ』(00)でも同賞にWノミネートされた。これ以前に、自身の初監督作であり、脚本も手がけた『セックスと嘘とビデオテープ』(89)で米アカデミー賞最優秀脚本賞にノミネート。また同作は1989年度カンヌ国際映画祭でパルムドール賞を受賞した。このほか、監督作に『KAFKA/迷宮の悪夢』(91)、『わが街 セントルイス』(93・未)、『蒼い記憶』(95)、『グレイズ・アナトミー』『スキゾポリス』(共に96)、『アウト・オブ・サイト』(98)、『イギリスから来た男』(99)、「オーシャンズ」3部作(01,04,07)、『ソラリス』『フル・フロンタル』(共に02)、オムニバス映画『愛の神、エロス』(04)の1エピソード『エロスの悪戯~ペンローズの悩み』、『Bubble/バブル』(05)、『さらば、ベルリン』(06)、「チェ」2部作(08)、『インフォーマント!』(09)、『And Everything is Going Fine』(10)、『エージェント・マロリー』『コンテイジョン』(共に11)、『マジック・マイク』(12)、『サイド・エフェクト』(13)、Cinemax放送のTVシリーズ「The Knick/ザ・ニック」(14~15)、『ローガン・ラッキー』(17)、HBO放送のミニシリーズ「モザイク ~誰がオリヴィア・レイクを殺したか」(18)、『アンセイン ~狂気の真実~』(18・未)、『ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-』『ハイ・フライング・バード -目指せバスケの頂点-』(共に19・未)、『レット・ゼム・オール・トーク』(20・未)などがある。また、13年5月にHBO放送でTV映画としてプレミア放送された『恋するリベラーチェ』(13)でメガホンを執り、13年度エミー賞を受賞した。加えて数々の作品の製作に携わっている。そのなかには、『マジック・マイク』の続編で、製作総指揮を務めた『マジック・マイク XXL』(15/監督:グレゴリー・ジェイコブズ)、自身の監督作をドラマシリーズ化した「ガールフレンド・エクスペリエンス」(16~17,21)などがある。
取材・文:村山章
1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。
『マジック・マイク ラストダンス』
3月3日(金)全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
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