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『ノック 終末の訪問者』M・ナイト・シャマラン監督 これは僕の家族のドラマでもある【Director’s Interview Vol.299】

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『ノック 終末の訪問者』M・ナイト・シャマラン監督 これは僕の家族のドラマでもある【Director’s Interview Vol.299】

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大胆奇抜なストーリーゆえに、つねに注目が集まるM・ナイト・シャマラン監督の新作。今回の『ノック 終末の訪問者』では、世界の終末が予言され、それを回避するために究極の選択が迫られる。森の奥のキャビン(山小屋)で静かな時間を送る3人の家族の前に、不審な訪問者たちが現れ、「家族の誰か一人を選んで命を犠牲にしろ、さもなければ70億の全人類が滅ぶ」と言われるのだが……。予想不能の展開に、ショッキングな描写も織り交ぜた、シャマランならではの世界を満喫できる一作。原作へのアプローチから、キャストや演出のこだわりとともに、映画監督としての現在の心境をシャマランに聞いた。


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原作に魅せられ勢いに乗って脚本を執筆



Q:前作の『オールド』(21)はフランス語のグラフィックノベルが原案で、今回の『ノック 終末の訪問者』もベストセラー小説が原作です。2作続けて“脚色”という作業になったわけですが、オリジナルの脚本とはプロセスが違うのでしょうか。


シャマラン:脚色というより、あくまで原作は“インスパイア”ですね。今回はポール・トレンブレイの小説の美しい設定に魅せられたのです。原作に気持ちを乗せて、あれこれ変更を加えることに抵抗はありませんでした。タイトルも『Knock at the Cabin』に変えたくらいです(原作は「The Cabin at the End of the World」)。変更点をポールにもあらかじめ伝えたところ「自分もそれを最初にやろうとした」と言ってもらい安心しました。原作が存在すると、脚本も勢いに乗って書ける感じです。すでに基本設定やキャラクターが完成されており、それを映画向けに発展させるわけですから。


Q:基本設定の中で、ゲイのカップルと養子の娘という家族は原作どおりです。何かあなたにとって特別な思い入れがあったのですか。


シャマラン:究極の選択を強いられる3人の家族が、それぞれ心に傷を抱えている点は、物語に“詩的”な印象を与えていると感じます。個人的なシンパシーとしては、僕のいちばん下の娘シヴァニ(三女)も養子なんです。僕と妻が彼女に抱く感情が、映画でも表現されたんじゃないでしょうか。劇中に登場する孤児院は、僕らが娘を迎えるために4時間もかけて訪れた場所をモデルにしています。ロビーで待っていた僕らは壁に描かれたイエス・キリストと子供たちの絵を眺めていました。その記憶を思い出して映画でも再現しましたし、主人公のカップルが初めて娘と会い、手で抱くシーンは、明らかに当時の感情で演出しました。ある意味で、本作は僕の家族のドラマと言っていいかもしれません。



『ノック 終末の訪問者』© 2023 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.


Q:そのイエス・キリストの絵や、キャビンを訪れる4人が「黙示録の四騎士」に例えられるなど、宗教色も感じられる物語ですが、あなたの宗教観が反映されているのでしょうか。


シャマラン:僕はスピリチュアルな人間ですが、特定の宗教に深い信仰心を持っていません。厳格なカトリック系の学校に10年通いつつも、両親はヒンドゥー教徒ですから。宗教や神話に関しては、ストーリーテリングの一部としてアプローチしている気がします。『サイン』(02)のエイリアンも『シックス・センス』(99)の幽霊も、「人間がこうだったらいい」という願望に神話の世界を重ねて描いたつもりです。聖書や神話を現実世界の何に置き換えるか。それを想像するのが僕は好きみたいですね。今回の4人は、重要な予言をする黙示録の四騎士として似つかわしくない風貌かもしれません。でも、そのぎこちなさが物語を面白くします。本当にこれは神の予言なのか。犠牲を払うのがこの家族で良かったのか。すべて勘違いなのか……と、あれこれ考えさせられますから。




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