呪いのメロディーはシンプルなハミングで
Q:さなの「呪いのメロディー」が生まれた経緯を教えてください。
清水:最初にカセットテープが見つかって…という話にしようとなり、30年ほど前、僕自身がバイトしていた京都の映画館で支配人から倉庫の片付けと処分を任された時の事を思い出して、取り入れました。また、カセットテープが元凶…というところから、かぐや姫の解散コンサートのエピソードを思い出したんです。誰かがコンサートを隠し録りしたテープに、女の子の泣き声みたいな音が入っていて、逆再生しても同じ声が聞こえるという…。この話は、僕が高校生ぐらいの頃、夏になるとよく怪談系の番組で特集されていました。今でもYouTubeで検索するとすぐに出てきます。脚本家の角田ルミさんやプロデューサー陣にも紹介したところ、皆この話は知らず、知っていたのは昭和世代の僕だけでした(笑)。そこで、事件の真相を追う探偵を僕の世代にしたら…と。
音楽をやっているGENERATIONSさんの映画なので、声だけよりもメロディーの方がいいし、そこはかとなく悲しげで、聞く都度、次第に気味悪く感じれてしまうようなものがいいなと。そこですぐ浮かんだのは『ローズマリーの赤ちゃん』(68)のメロディー。歌詞を歌っているようで歌っていない、ハミングに近いものだったので、それぐらいシンプルな方がいいかなと。他にも、『悪魔の棲む家』(79)の冒頭にかかる曲などを参考に、メロディーを作ってもらいました。山崎ハコさんの曲や、暗い歌を歌う方の曲なども候補に上がったのですが、最終的にはシンプルにハミングだけのものの方がいいんじゃないかと。
『ミンナのウタ』©2023「ミンナのウタ」製作委員会
発注の際に「ラン、ランララ、ランラン♪」が続いたり、「フン、フンフフ、フンフン♪」が続いたり、と説明していると、「いや、それだと『風の谷のナウシカ』の“王蟲のテーマ”になっちゃいますよ」なんて経緯も(笑)。ハミングだと何か既成のものを連想しがちになるので案外難しいんですよね。
Q:声のイメージなどもあったのでしょうか。
清水:声のイメージは中学生の女の子ですね。最初は高校生という案もあったのですが、中学生の方が、アイデンティティや心身の成長がまだ不安定で、何か衝動にかられるような危うさもある。さらに繊細さもあるから良いんじゃないかと。さな役のオーディションは中学生に見える子で、という第一条件から始めました。