一度聴いたら伝染する呪いのメロディーを奏でる、少女・さなの怪異が迫り来る──。ジャパニーズホラーの巨匠・清水崇監督の最新作『ミンナのウタ』は、GENERATIONSのメンバーが本人役で出演するホラー映画。「GENERATIONS」と「ホラー」という一見交わりそうにない組み合わせだが、清水監督は見事に「怖いホラー映画」として作り上げてみせた。清水監督は如何にしてこの「怖い」映画を生み出したのか?話を伺った。
『ミンナのウタ』あらすじ
人気ラジオ番組のパーソナリティを務める、GENERATIONSの小森隼。収録前にラジオ局の倉庫で30年前に届いたまま放置されていた「ミンナノウタ」と書かれた一本のカセットテープを発見する。その後、収録中に不穏なノイズと共に「カセットテープ、届き…ま…した…?」という声を耳にした彼は、数日後にライブを控える中、突然姿を消してしまう。マネージャーの凛(早見あかり)は、事態を早急且つ秘密裏に解決するため、元刑事の探偵・権田(マキタスポーツ)に捜査を依頼。メンバー全員に聞き取り調査を進めるが、失踪した小森がラジオ収録の際に聞いた「女性の鼻歌のような、妙なメロディーが頭から離れない」と言っていたことが判る。そして、リハーサル中に他のメンバーたちも“少女の霊”を見たと証言。ライブ本番までのタイムリミットが迫る中、リーダーの白濱亜嵐、凛、権田は捜索に乗り出す。やがて、少女の霊の正体は、“さな”という女子中学生だということが判明するが、彼女が奏でる“呪いのメロディー”による恐怖の連鎖が始まり・・・。
Index
怖いホラー映画を作りたい
Q:GENERATIONSさん主演の映画ですが、しっかり怖いホラー映画として作られています。GENERATIONSのファンだけではなく、ホラー映画ファンもちゃんと満足させたいという思いはあったのでしょうか。
清水:そうですね。それが無かったら引き受けてないですね。GENERATIONSさんの映画ということで、ライブシーンやミュージックビデオ的な要素があるのであれば、そういうのが得意な監督の方が良いのでは?と最初は思いました。実はGENERATIONSの皆さんの10年を振り返った映像などをエンディング用に作ったのですが、逆にLDHさん側から「いや、そんなにウチ(GENERATIONS)に寄せてくれなくて大丈夫です。GENERATIONS映画じゃなく、もっと清水監督の映画として作ってください!」と言われたんです。僕も世界中の老若男女が観ても楽しめる映画にしたかったし、良い意味でコラボになればと思いました。
Q:しっかり怖くして大丈夫だと。
清水:「怖くしてください」と言われつつも、マキタさん演じる探偵のキャラクターなど、ちょっとクスクスする感じも入れています。「ふざけ過ぎです」と突っ込まれるかなと思ったのですが、関係各位、そこも楽しんでもらえたようで…(笑)。日本人の観客は真面目だから、ホラーなのに笑っていいのかな?ってなるんです。笑いたいなら笑って欲しいんですけどね(笑)。それにマキタさんの探偵のポジションはGENERATIONSに詳しくない方への知識的サポートでもあるので必要でした。
『ミンナのウタ』©2023「ミンナのウタ」製作委員会
Q:GENERATIONSさん主演の映画という話があった際に、すでに自分の中で温めていた企画はいくつかあったのでしょうか?それともゼロから企画を考えられたのでしょうか。
清水:ゼロからです。最初はGENERATIONSさん10周年というのを聞いてが、そことホラーをどうやってバランス取るの?と悩みましたね。また、公開時期を聞いて「(時間がなくて)え!今から撮るの?」というのもありました。であれば、場所を固定させて、そこで皆が同じ経験をした話をしているのに、それぞれの話が食い違っているといった『レザボア・ドッグス』みたいな構成にしてしまえば、特に撮影で移動することもなくお芝居もじっくりできるだろうと。コンサートを控えた彼らが合宿でリハーサルをしていて、そのスタジオをベースにして、彼らの食い違った回想を描ければ…と思っていたのですが、僕が脚本を直すにあたり、どんどんスタジオを離れる内容になっていった。プロデューサーは「最初の話と違うじゃないですか」と頭を抱えていました(笑)。
Q:撮影の物理的な状況を踏まえた上で、脚本をアレンジされたと。
清水:そうですね。予算も時間も制限があったので、逆に何か枷や規制があった方が、その中で遊びようがある…と捉えるべき企画だな、と。今作は、何でも自由というよりは、やりやすかったかもしれないですね。