オーディションでの出会い
Q:さな役の穂紫朋子さんはどうやって選ばれたのでしょうか?
清水:オーディションに来た方は二十歳前後の人が多かったのですが、穂紫さんが中学生ぽく見えたことと、佇まいと醸し出している雰囲気で選びました。最終的に何人か候補を残して決めかねていたときに、「普通に何も考えずに、こっちを見て真っすぐ歩いて来てください」とお願いしたら、穂紫さんが歩いてきたときに、僕もプロデューサーも皆「うわっ」とのけぞらざるを得ないような不気味さを感じたんです。「あ!もうこの子しかいない。見つけた!」と思いました。彼女が纏っているオーラや醸し出している雰囲気が絶妙で、彼女でないと出来ないと確信したし、それが他の方と全然違ったんです。
今は映画監督になった松本花奈ちゃんも、実は子役のときに僕のホラー映画に出てもらったのですが、当時の彼女も同じオーラを持っていました。穂紫さんをみたときにそれを思い出しましたね。なんか翳りがあるんですよ。そのとき松本花奈ちゃんは6年生だったんですけど、同じものを感じました。あくまで誉め言葉なんですけどね。
Q:オーディションではいろんな出会いがありますね。
清水:「あ!この人、絶対売れる!」とかはたまにありますね。本人はやる気がなくて連れてこられた感じなのに、入って来た途端に「あ!この子だけ違う」というのはたまにあります。最近では奈緒ちゃんとかはまさにそうでしたね。まだ彼女が上京してくる前、オーディションで初めて会った時に“多くの人に受け入れられるものを持っているな”と感じました。
『ミンナのウタ』©2023「ミンナのウタ」製作委員会
Q:母親役の山川真里果さんもすごく怖かったです。
清水:最初はどこにでもいそうなお母さんのイメージで書いていたのですが、脚本を書いているうちに、彼女の抱えた背景が思い浮かんできて…さながメインなので、母親の背景や心情までは映画内で描き切れないだろうけど、振り切った怖さに持っていけるお母さんはいないかなと。母親役の候補の中に山川真里果さんがいて、以前『ホムンクルス』(21)という映画に出演いただいたことがあったんです。当時は1シーンだけの出演だったのですが、「この人だったら僕が思っている以上の怖さを持っていけるかも」と思い、「山川さんにしましょう」と即決しました。
現場のご本人はノリノリで、山川さんの方で彼女なりに母親の背景や心情を考えてくれていて、母親が幽霊になった理由まで「この母親はこうなんじゃないか?」と相談してきてくれました。それは僕が思い描いていた設定と似ていて、母親に関する議論がいいセッションになり、現場では僕が思っている以上のものが撮れました。まさに山川さんのおかげですね。
Q:母親が中務さんにドドドと迫ってくるシーンは本当に怖かったです。
清水:皆あそこが怖いって言いますね(笑)。僕も「もうぶつかるぐらいで来てください!」とお願いして、山川さんも熱が入っていて容赦なかったですね。映らないのですが、カメラ脇に居てもらった中務さんは「マジで怖いんですけど」と言ってましたし、カメラマンもファインダーから目を離して仰け反るくらい怖がってましたね(笑)。