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『白鍵と黒鍵の間に』冨永昌敬監督 あえて“時代らしさ”を再現しない【Director’s Interview Vol.360】

『白鍵と黒鍵の間に』冨永昌敬監督 あえて“時代らしさ”を再現しない【Director’s Interview Vol.360】

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“あいつ”っぽくなってくれた森田剛



Q:“あいつ”役の森田剛さんが意外な配役でもありつつ出色でした。


冨永: “あいつ”は、“コミカルな役柄”という言い方でも間違いではないのですが、僕がイメージしたのはコミカルというよりも、全員が“出来損ない”や“マヌケ”といった、なんかそういうユルい人たち。自分の能力を超えた状況にいるので、皆ずっこけた感じになっている。それをいつもイメージしていました。多分森田さんは早いうちにそれに気づいていたと思いますね。打合せのときに森田さんが「髪どうしましょう? 剃りましょうか?」「眉も剃っていいですか?」と言ってきて、事務所の方に「絶対ダメ!」って止められていました(笑)。キャラクターがどういう存在なのか?ということについて、こちらから説明する前にわかってくれた感じがありましたね。


“あいつ”にはもともと“和田”という役名があって、脚本にはちゃんと和田って書いてあるんです。でも「久しぶりに出所してきたのに、皆俺の名前を忘れてる」っていうセリフがあって、名前で呼んでもらえない悲しい奴なんです。名前が一回も出てこないのに、「役名:和田」っておかしいなと思って、改めて脚本を読み返すと「あいつ」としか呼ばれてなかったんです。「じゃあ、もう“あいつ”ってことにしませんか?」と森田さんに言ったら、まるでそれを待っていたかのように、森田さんは更に“あいつ”っぽくなってくれたんです。



『白鍵と黒鍵の間に』Ⓒ2023 南博/小学館/「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会


Q:ヤクザの会長・熊野役の松尾貴史さんも、同じく意外な配役でハマっていました。


冨永:去年の9月に宮沢章夫さんが亡くなられましたが、僕は宮沢さんに仲良くしてもらっていたんです。「宮沢さんから色んな人を紹介してもらったなぁ」と考えていたら、松尾さんを紹介してもらったことをふと思い出した。松尾さんはモノマネが出来るような人なので、この会長役も僕が想像もつかないような感じにしてくれるんじゃないかと。それでお願いしました。松尾さんはヤクザの役は初めてらしく、「こんな絵に描いたようなアウトローな役は今までなかった」と言っていました。配役を知らずに観ると、松尾貴史だって皆わからないんじゃないかな。それくらいの感じがありましたね。




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監督・脚本:冨永昌敬

1975年愛媛県生まれ。1999年、日本大学芸術学部映画学科を卒業。主な監督作品は、『亀虫』(2003)、『パビリオン山椒魚』(06)て、『コンナオトナノオンナノコ』(07)、『シャーリーの転落人生』(08)、『パンドラの匣』(09)、『乱暴と待機』(10)、『ローリング』(15)、『南瓜とマヨネーズ』(17)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18)など。最新監督作は、連続ドラマ『僕の手を売ります』(10月27日からフジテレビFODおよびAmazonプライムにて配信)。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成





『白鍵と黒鍵の間に』

10月6日(金)テアトル新宿ほか全国公開

配給:東京テアトル

Ⓒ2023 南博/小学館/「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会

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