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『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』大島新監督 現実と虚構を織り交ぜた手法の先に天才・唐十郎の素顔は見えたのか?【Director’s Interview Vol.459】

『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』大島新監督 現実と虚構を織り交ぜた手法の先に天才・唐十郎の素顔は見えたのか?【Director’s Interview Vol.459】

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※本記事は映画のラストに触れているため、映画未見の方はご注意ください。


今年2024年5月に亡くなったアングラ演劇の天才児・唐十郎。その死を悼み、彼とその劇団員の姿を追った『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』が全国で17年ぶりに再上映される。監督は『なぜ君は総理大臣になれないのか』(20)、『国葬の日』(23)など日本の深層を描くドキュメンタリーで知られる大島新。彼の劇場映画デビュー作だ。


本作は唐十郎が主催する劇団「唐組」が一つの作品を作り上げる過程に密着した貴重な記録。唐と劇団員たちが生々しくも激しく創作に打ち込む姿が映し出される…と書くと、ありがちな劇団ドキュメンタリーと思われるかもしれない。しかし本作には稀代の劇作家を描くため、大島監督が施した大きな仕掛けが隠されている。


観客は唐十郎という人間に魅入られながらも、巧妙に仕掛けられた大島のトリックに翻弄され、「演じる」とは何か? という問いに向き合わざるをえなくなる。この映画はそうした知的エンターテインメントとして成功した稀有な例でもあるのだ。大島監督が制作の裏側を語った本稿と作品を合わせて楽しんで頂ければ、映画をもう一度見直したくなることを受け合おう。


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これまでになく被写体に迫れていなかった



Q:今回17年ぶりに再上映されるということで作品を見直された感想はいかがでしたか?


大島:わりと最近観たんですけど、ラストの「行商人ネモ」という芝居を見ながら泣いてしまいました。自分でも本当にびっくりしたんですが、色々なことが蘇ってきて。


僕はあの頃、唐十郎さんへの興味が当然あったんですが、劇団員達へのシンパシーもすごくあったんです。特に稲荷さんという主演の男性は同学年ということもあり、思い入れがあった。普通劇団を扱ったドキュメンタリーでは、舞台のシーンは最後に付け足しくらいで出てくると思うのですが、この作品では比較的多めに使っている。それを観ながら色々思い出して、もう泣けてきましたね(笑)。個人的なセンチメンタルだと思うんですけど。自分で言うのもなんだけど、「俺も頑張ったな」と。



『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』(C)いまじん 蒼玄社 2007


Q:元々「情熱大陸」で唐さんを取材して、放送後に改めて撮影して映画化したんですよね。


大島:そうです。当時唐組は春と秋に公演をやっていたんですが、2006年の春公演を追ったのが「情熱大陸」。その放送後に何か違う形にできないかと考えました。だから映画にはテレビの映像はワンカットも使っていません。


Q:劇場映画として大島新監督のデビュー作となったわけですが、なぜ唐さんをドキュメンタリー映画にしたいと思われたのでしょうか?


大島:それまで僕は主に「情熱大陸」で人物ドキュメンタリーを多く手掛けていて、その中で唯一唐さんに関しては描ききれなかったと感じたんです。


それはキャラクターの問題とか、テレビの放送時間の制約もあるけれど、一番は僕がこれまでになく被写体に迫れていなかった。食い込めていないという、やり足りなさみたいなものがあった。「情熱大陸」は一人の主人公をメインに描く番組なので、唐さん以外の劇団員たちもあまり描けなかった。あとはメインスポンサーがアサヒビールなので、飲んで怒り出すシーンが使えない(笑)。




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