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『ミッキー17』ポン・ジュノ監督 これは私にとって初の青春映画なんです【Director’s Interview Vol.482】
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『パラサイト 半地下の家族』(19)でアカデミー賞作品賞・監督賞を始め4部門を獲得し、世界中にその名を知らしめた韓国出身の監督、ポン・ジュノ。その後6年もの沈黙を破って発表するのが『ミッキー17』だ。遠い未来、遠い惑星を舞台に、文字通りエクスペンダブル(使い捨て)な人生を送る青年ミッキーの、悲惨な日々を描いたブラックコメディだ。
これまでもインターナショナルな活躍を展開してきたポン・ジュノだったが、そんな彼にとってもこれが初のハリウッドメジャーとのコラボレーション。話題性も活躍も目覚ましいポン・ジュノのインタビューをお届けする。
『ミッキー17』あらすじ
人生失敗だらけのミッキーは、何度でも生まれ変われる夢の仕事を手に入れた、はずが……⁉それは身勝手な権力者たちの過酷すぎる業務命令で次々と死んでは生き返る任務、まさに究極の“死にゲー”だった。ブラック企業のどん底で、ありとあらゆる方法で搾取され、死んでは生き返らせ続けるミッキー(ロバート・パティンソン)。何度も死に続け、遂に17号となったミッキーの前に、ある日手違いで自分のコピーである18号が現れ、事態は一変、2人のミッキーは権力者たちへの逆襲を開始する。ターゲットは自分の得しか考えていない強欲なボス、マーシャル(マーク・ラファロ)と現場に“死にゲー”任務を強いる、イルファ(トニ・コレット)だ。使い捨てワーカーvs強欲なブラック企業のトップ、ミッキーの逆襲がついに幕を開ける――。
Index
私にとって初の青春映画なんです
Q:本作を監督することになった経緯を教えてください。
ポン:ワーナー・ブラザースとプランBがエドワード・アシュトンの原作「ミッキー7」を紹介してくれました。最初はその要約を読んだのですが、そのときから主人公ミッキーに強く惹かれたんです。なぜなら、彼を通して現代の若者、現代の労働者階級を描けると思ったからです。ただ、原作の「ミッキー7」はもっとインテリでした。なので、もっと彼らが共感してくれそうなキャラクターに変更しました。それにしても、死ぬことが仕事という設定だけで、相当に興味深いと思いますよ。
Q:本作では不平等や植民地主義等、いまの社会が抱える政治的なテーマにも触れています。そういう諸問題を描けることも、本作に魅力を感じた理由でしょうか。
ポン:間違いなくそうです。というか、それこそがSFの大きな魅力ですから。遠い未来、未知の惑星を舞台にしながらも現代の問題を描かせてくれる。未来の社会を描いている体(てい)を取りながら、私たちが実際にいま、経験していることをありのままに描くことができるんです。たとえば、たまたまヒーロー的存在になってしまうミッキー(ロバート・パティンソン)にも、彼の対極にいるマーシャル夫婦(マーク・ラファロ&トニ・コレット)にも、現代社会が映し出されていることに、みなさんも気付いてくれると思います。ミッキーには無力な敗者の姿、マーシャルたちからは恐ろしい政治家たちの姿を思い起こされるはずです。どのキャラクターにも、いまを生きる私たちの人生に響く何かを見つけ出せると思っています。
『ミッキー17』© 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
Q:本作は、『スノーピアサー』(13)で見せたディストピア的な未来感、『オクジャ/okja』(17)の未知の動物に対するリスペクト、『パラサイト 半地下の家族』で描いた階級社会がもたらす歪み等を内包していて、あなたの集大成ととることも出来ます。そういう意図はあったのでしょうか。
ポン:ミュージシャンは彼ら独自の声色と声のトーンをもち、それを維持しています。ファンはそれを求めて彼らの音楽を聴くわけです。私と観客の関係は、それに結構似ているのかもしれません。私の映画にも繰り返し登場するテーマがあり、自分自身がひとつのジャンルになりたいという野心的な願望もあります。その一方で、常に新しいことに挑戦したいという強い気持ちもあるんです。新しいことをせずに映画を送り出すことに意味はないと考えていますから。
では、本作では何が自分にとって新しかったかというと、ミッキーです。彼はこれまで見たこともないようなユニークで奇妙なキャラクターです。自尊心はゼロに等しく、ともすれば間抜けにすら見えます。ところが、そこにもうひとりのミッキー18が、あたかも突然変異のように現れ、ダメダメなミッキー17を変えてしまう。そういうふうに捉えると本作は、“Coming of Age Movie”(大人になる成長物語/青春映画)だと思うんです。私はこれまで青春映画を撮ったことがないので、これこそが新しい旅だったと思っています。原作のタイトルは「ミッキー7」ですが、それを“17”に変えた理由もそこにあります。青春映画のつもりだったので17歳を意識しての“17”であり“18”。12や13、23や24じゃダメなんです。もちろん、殺された回数が多いほうが面白いというのもありましたが、それ以上に“青春”にこだわったからです。
Q:ミッキーの成長物語なんですね。
ポン:そうです。ミッキーのジャーニーは、『グエムル -漢江の怪物-』(06)で描いた政府から見放された家族の道行き、『スノーピアサー』で描いた何の力もない階層の人たちと通じるものがあります。不思議だと思いませんか? 私たちはいつも、未来のことやテクノロジーの進化について語り、社会は明らかに前進している。にもかかわらず、何の力ももたない人たちはどの国に行っても必ずいるんです。この物語は、そういう部分も描いていています。
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