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『HIDARI』川村真司監督 × 松本紀子プロデューサー 世界を超えろ!コマ撮りアニメの挑戦【CINEMORE ACADEMY Vol.49】

『HIDARI』川村真司監督 × 松本紀子プロデューサー 世界を超えろ!コマ撮りアニメの挑戦【CINEMORE ACADEMY Vol.49】

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マテリアルに意味がある物語



Q:パイロット版は当時バルト9で拝見しましたが、まさに「コマ撮りのクリエイターが作った作品ではない」と観て感じました。新しい視点が入っていて、何か壁を破った感じさえしました。


松本:川村さんはコマ撮りを好きでいつつも、「コマ撮りってこんなものだよね」という固定概念がない。その視点がないと、結局いつもの繰り返しになってしまうんです。この業界が今のままでいいのかと考えた時、現状を打破するには外からのエネルギーが必要だと常に感じていました。


川村:すごい勇気ある決断だなと思いつつ、なぜ僕を呼んだのかなと考えながら参加していました(笑)。でもやっていくうちに意図もわかってきましたし、僕もひねくれているので「これまでコマ撮りでやってこなかった表現を見つけたいな」と。


松本:それでも普通は「コマ撮りなら、こうかな」と寄せてしまうもの。でも川村さんはそうではなかった。


川村:コマ撮りで長編映画なんて作れないと思っていたからこそ、それにチャレンジしたくなりましたし、枠を壊してでも新しい表現をやりたいという松本さんの思いも伝わりました。だとしたら、奇をてらいすぎず、「コマ撮りでやってこなかったことは何か」を考え始めたんです。


最近はCGでもコマ撮り風の表現が増えています。本物のコマ撮りは大変だからCGでやるわけですが、リアルな立体物を撮っている本物のコマ撮りとCGとでは何かしら温度に差がある。その差異は何かと考えると、「リアルな物質を一コマずつ実際に動かして撮影している」という点に尽きる。そこで、リアルならではのテクスチャーや質感、それをプロジェクトの根幹として活かせる物語が作れないかと。そこから、マテリアル(素材)をベースにした物語、その素材であることに意味がある物語を探し始め、左甚五郎の話に行き着いたんです。



『HIDARI』©︎dwarf/Whatever Co./TECARAT


左甚五郎は実在したかどうかわからない謎多き人物で、日光東照宮には「眠り猫」など、甚五郎が作ったとされるものも残っていて、本当にいたのか曖昧な点も面白い。講談では「彫った木彫りに命が吹き込まれて動き出す」というマジカルなエピソードもあります。動かないはずの木彫りが動き出すというのは非常にコマ撮りらしい設定。この甚五郎の物語をファンタジーに寄せ、時代劇でありながらマジカルな世界観で描ければ、物質と物語が補完し合い、見たことのない作品になるのではないか。そこから、木彫り職人・左甚五郎の物語を、彼が彫ったような木彫りの人形で制作するアイデアが浮かび、コンセプトが一気に固まりました。


松本:木彫りの人形で木彫り職人の話をするメタ構造の面白さはもちろんですが、何より天才的だと思ったのは、歴史がベースになっている点。IPモノばかりが世に出て「原作は何ですか?」と問われるばかりな中、この物語は「歴史が原作です」と言える強みがある。実在したかもしれない有名な人物をモチーフにしつつ、歴史を巧みにフォローする。「これはあの事件のことかな?」と歴史好きが気づく仕掛けも含め、すごく良くできた企画だと感じました。


そして、コマ撮りで表現する意義もある。なおかつ私はそのタイミングで、素晴らしい人形を造形する八代健志さん(TECARAT)を知っていて、稲積君将さんというアクションをやりたくてうずうずしているアニメーターがいることも知っていました。これはもう、彼らを巻き込んで一緒にやるしかない。数年前なら実現不可能だったキャスティングが、まるで惑星直列のように全てが揃ったんです。





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