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『HIDARI』川村真司監督 × 松本紀子プロデューサー 世界を超えろ!コマ撮りアニメの挑戦【CINEMORE ACADEMY Vol.49】

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世界照準へ、英語で書いた脚本



Q:脚本は最初から世界照準で作っていたのですか。


川村:はい、そのビジョンは最初から明確でした。どうせ長編を作るならグローバルに通用するものにしたい。長編映画を撮ったことがない僕が言うのもおこがましいですが、日本映画のバジェットやスケール感は小さく、特にコマ撮りで作ろうとするとこぢんまりとしたテーブルトップのようなサイズになってしまう。そのため初期段階から松本さんとも思いは一致していて、「絶対に世界を目指そう」と決めていました。ただそのためには戦略的に道筋を考える必要がありました。


新人の僕と長編制作経験がないドワーフスタジオの組み合わせで、ハリウッド規模の予算を獲得するのはかなりのミラクル。通常は企画書でピッチを行いますが、それではハリウッドは見向きもしてくれない。何万という企画書に埋もれてしまうだけ。だからこそ、まずはパイロットフィルムを作って、圧倒的な画のインパクトで正面からいきなりぶん殴るような衝撃を与えようと。その映像でドアをこじ開けてからピッチをしていこう、と早い段階でそう決めていました。スポンサーもいない状況でしたが、チームでお金を出し合い、予算内で制作できる限界の5分尺(コマ撮りパートは実質3分半)の映像を作ろうと動き出しました。 最初から「世界を狙った映画」というゴールがあったため、脚本も世界のオーディエンスを想定して執筆しています。日本特有の言い回しに縛られないように、最初から全て英語で脚本を書きました。


Q:英語で脚本を書いたんですか⁉︎


川村:そうなんです。英語で脚本から執筆できる監督は日本にはまだ少ないですし、シナリオの中でも、特に会話を海外の人にもわかりやすい形で書ける利点があります。だから最初から全て海外標準のフォーマットで進めました。日本の時代劇なので日本特有の情緒的な表現を書きたくなりますが、英語にした瞬間にそうしたニュアンスは全て失われてしまう。日本語の細かいニュアンスが物語の重要な要素になっていた場合、英語にした途端に面白さが目減りしてしまうんです。キャラクターや世界観の構築を初めから英語ベースで行うことで、翻訳による劣化を防げるというメリットがありました。大ヒットしたドラマ『将軍 SHŌGUN』(24 Disney+)も、アメリカの視聴者に向けて作られた時代劇であり、海外の文脈に合わせたダイアログで構成されているからこそウケたのだと思います。この戦略は多分間違っていないかなと。


ただ、ハリウッドの脚本フォーマットすら知らない状態で適当に書いていたら、「これには厳格なルールがある。フォントサイズや効果音の表記方法は絶対に変えないで。台詞の書き方も決まりがある」といろいろと指摘されました。ハリウッドの脚本は「1ページ=映像の1分」として厳密に計算されるシステムなので、90分の映画なら正確に90ページに収めなければなりません。「そんなルールがあるなら書く前に言ってよ!」と思いつつ、勉強しながら少しづつ完成させていきました。



『HIDARI』川村真司監督 


Q:世界照準で作ることを前提として、あえて「左甚五郎」という題材を選ばれたかと思いますが、他の企画案は時代劇ではなかったのでしょうか。


川村:時代劇とは全く関係のない企画もありました。人形とそれを動かすアニメーターの恋を描くようなメタ的な物語など、世界観の異なる企画案も複数出しました。それでも結果的には『HIDARI』の企画にして本当に良かったと思っています。少し後付けの理由になりますが、今は『将軍 SHŌGUN』の大ヒットや『鬼滅の刃』の世界的なブームもあり、海外の視聴者が日本のカルチャーや時代劇に強い関心を持ち始めているタイミング。『NARUTO』などもそうですが、「時代劇」とはファンタジー要素がありつつも海外の人にとって全く理解不能ではなく、「完全には理解していないけれど、なんか知ってる」と思ってもらえる絶妙な世界観。「世界で受け入れられる時代劇」というジャンル選択は戦略として非常に正しいと感じました。 そこに『鬼滅の刃』のようなダイナミックな日本アニメ的アクションを取り入れようと考えたんです。


通常、コマ撮りはカメラを固定して撮影することが多いのですが、パイロットフィルムではカメラをダイナミックに動かして実験的に撮影しました。コマ撮り作品として誰も見たことのない映像になり、同時に時代劇という設定が世界中に理解されやすいという、僕らとしては戦略的に完璧なバランスの作品を生み出せました。仮説ではありましたが、「世界で受ける要素」を戦略的に組み合わせて構築したんです。作りながら常に「これは世界へ出ていけるパワーを持ったコンセプトなのか?」と自問自答していました。





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